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【分析結果】プロサバンナ・ナカラ回廊農業開発マスタープラン・コンセプトノート

以下、12月18日第7回ProSAVANA事業に関する意見交換会(NGO=外務省・JICA)で発表されたものです。

同意見交換会では、JICA・ブラジルABCとモザンビーク農業省が合作したものだということですが、残念ながらとても問題の多いものでした。詳細は、以下ご一読ください。

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ナカラ回廊地域の農業開発マスタープラン形成
のためのコンセプト・ノート(Concept Note)についての
専門家による分析

本分析は、第7回「ProSAVANA事業に関するNGO・外務省意見交換会」(2013年12月18日)での議論に寄与するために作成された 。日本のアフリカ農村経済学、アフリカ農業・農村開発、モザンビーク研究、国際協力研究の専門家によるものである 。これは、ProSAVANA-PD の「レポート2」(2013年3月 )の分析に続くものであり(「専門家分析と問題提起」2013年5月8日 )、プロサバンナ事業について国内外の市民社会が事業実施(政府)関係者らと活発に議論する土台を提供することを企図している。

なお、分析にあたり、JICAに対し「コンセプト・ノート」作成の土台となった現地調査報告の共有を繰り返し求めてきたが、現在も提供頂けていないため、同「ノート」のみの分析となった 。同「ノート」の各所に「現状状況の把握・認識」の問題が散見され、それが現地調査の問題(狙い・設定・手法・結論の導きだし方)から来ている可能性が高いものの、資料の不在からその検証が不可能となっている点について予め明記する。事業をより良いものとするため、また意味のある議論のため、現地調査報告の早急なる公開を引き続き求めたい。

総論
ProSAVANA-PD より2013年9月に発表されたナカラ回廊農業開発マスタープランのConcept Note(コンセプト・ノート)は、以前、市民社会が入手した「ProSAVANA-PDのレポート2(2013年3月)」の基本的な考え方をそのまま維持しながら、国際的な懸念事項となりつつあるアグリビジネスの進出・土地収用の面を曖昧にしている。代わりに、農民とくに小規模農民が、現場における自然・社会状況に自らの保有する資源を用いて対応している事実から課題を設定せず、「農業革命」ともいうべき戦略、すなわち個別の土地占有権取得を強行し,耕地の使用権の範囲を固定、確定することによって、未利用地となる部分を作り出し、その部分への農業投資を促進しつつ、マスタープラン対象地の小規模農民に、外部資材依存の高投入・高収量の農業への転換を強制するための戦略を描き出している。 
一方アグリビジネスの進出を促していることは、農業へのサプライチェーンの構築を彼らの活動に依存することを謳っており、小農生産をこの目標に適したものに転換させる意図を示している。しかし小規模農民にこのような農業の急転換を強いることは、小農の生活の社会的基盤となっているコミュニティ(生活共同体)を崩壊させる。小農がアグリビジネスとの間で、一方的に不利な契約栽培の関係に追いやられる、あるいはまた、土地占有権の範囲を狭く決定されるといった結末を招く結果となることが、ほぼ確実に予測される。
これまで、日本政府(外務省・JICA)より、プロサバンナ事業並びにマスタープラン策定の目的は、「対象地域の小農支援のため」と繰り返し強調されてきた 。以上の「総論」並びに、以下の「内容分析」でみられる通り、同「ノート」が対象地に暮らす400万人近くの小農とその家族の支援のためのものとなっていないことは明らかである 。このように重大な問題のある「コンセプト・ノート」は、現地の農民や市民社会に大いなる懸念を生じさせることは確実であり、これまでに現地社会で蓄積したプロサバンナ事業へのさらなる反発と不信感を生じさせる「リスク」が大きい点を指摘する 。

コンセプト・ノート の内容に関する分析
1.目的(Mission) として、(1)農業を近代化し、生産性と生産量を向上させ、農業生産の多様化をはかり、(2)農業投資とサプライチェーンの創設を通じて雇用を増大させる、と書かれている(p.1)。これは農業の近代化が、現在すでに小農・中農生産のもとで多様化している農業を、特定作物の単作の方向に向かわせる結果を招き易い矛盾をはらんでいる。また農業投資の受け入れとサプライチェーンの創設が、すぐにも雇用を飛躍的に増大させるかのような議論になっており、大規模企業における雇用吸収力がそれほど大きくない現実を見誤っている。

2.小農とアグリビジネスのwin-winの関係を構築するというが(p.10)、それを可能にするためには、力関係の圧倒的な差がある現状で、ビジネス側の利潤追求欲の抑制と、政府による強力な介入(例えば契約農業の導入に際しては、契約の取り決めに関する小農側の支援)が不可欠となる。しかし大規模資本の導入に熱心な現政権側には、そのような支援を期待できず 、むしろ企業進出の便宜を図ることを主目的として誘致活動をする方向が予測される。

3.以上のアグリビジネスへの配慮は次の諸点にも見られる。モザンビーク各所で本年3-4月に開催された第3回ステークホルダー会議で配布された資料、その基となった「ProSAVANA-PDのレポート2」に顕著であった「ゾーニング(Zoning)」の手法をそのまま踏襲する一方、同「ノート」ではゾーニングごとの開発主体の指定は行われていない(pp. 13~17)。しかし、ゾーニングの考え自体が農業・農村開発においてトップダウンの典型的な手法であり、この手法を使う限り、ほぼ必然的に農家の選択・自由を奪う点についての理解や配慮が皆無である。また、ゾーニングの考えは、次に続くバリューチェーンの創設(pp.17~18)とクラスター(集合的)システム開発の構築(pp.19~24)の考え方にそのまま残っている。ここでは先行研究で当たり前に議論されるバリューチェーンの否定的な問題点(商品ごとの1社独占、競争排除、輸出向けの優先、利益分配上の問題、赤字の農業者への押し付け)などは、まったく考慮されていない。

4.マスタープランの実施に関するキーアクター(主要な関係者)として(pp.24-26)、
1)農民(小規模、中規模、商業的)、2)公共セクター(政府)、3)民間セクター(商業的農業)、商人、商社、加工業者、農村金融などのサービス供給者、測量などの専門家)、4)市民社会(NGO、大学関係者)、5)開発パートナー(ドナー国と国際機関など)、が列挙されている。公共セクターの役割として、「農民と民間企業に競争的な環境の中で活動する条件を作り出す」と書かれている。しかし小規模農民、女性、その他の傷つきやすい者の権利を守ることは書かれていない。ここで小規模農民の役割として、特に強く主張されているのが、自給的農業から「持続的」農業への転換であり、市場向け農業の推進である。小農、中農、商業的農業を区別していないばかりか、小農民の農業生産のあり方を一括りにして扱い、現状に発展の兆しがあるにもかかわらず、小農民を現在の貧困問題の原因であると決め付け、農民の自発性を無視して、恣意的に上述の役割を決定している。
なお、同「ノート」で「持続的農業」と呼ばれている農業の手法は、改良種子や化学肥料等外部からの投入財に依存した農業であり、通常「持続的農業」とは呼ばれないものである。特に、小農の視点からみて、外部投入財に頼り続けなければならない農業の在り方は、明らかに経済的な面でも環境的な意味でも「持続的」と称することはできないことは周知の通りである。この点の考察がまったくされずに、「持続的農業」という概念が持ち込まれているのは恣意的といわざるを得ない。

5.社会環境的配慮
本事業には、JICAの「環境社会配慮ガイドライン(2010年)」が適用されると記されている(p. 26)。しかしこのガイドラインは、モザンビークの住民や市民社会団体にきちんと説明されたことは無く、公用語であるポルトガル語訳も無いため、住民や市民社会が十分に理解することは不可能なまま現在に至っている 。つまり、住民の情報アクセスの権利が保障されず侵害される一方、「説明会」「ステークホルダー会議」「意見聴取」を行ったと強調されている 。
またナカラ回廊の環境的、社会的影響は「調査中である」と書かれているが、そのような調査が公表されたことはない。またモザンビークの法に定義された環境影響評価(EIA)が、個々のプロジェクトについて、適用時における執行期間の責任団体によって実行されると書かれている。マスタープランの中心的問題(土地、林地、食料安全保障、便宜の配分関係)については、別に勧告を作成するとされる。
しかし現在、推測できる否定的な影響は、すでに以前からのこの周辺への急激な投資の進出によって明らかな事柄が多く、事後的な評価は受け入れがたい。「自然環境上の」現地への否定的な影響として、17項目があげられているが(p.27)、 a)生物多様性の喪失、b)森林の二酸化炭素吸収力の減少が入っておらず、社会への否定的影響には、単に可能性のあるリスクとしてc)文化的、歴史的遺産の喪失、d)非自主的移住、f)生活スタイルの大きな変化、g)傷つきやすいグループの周縁化、h) 性差の拡大があげられている。またあり得る影響として考えられる、i)住居移動の際の補償が不十分、j) 生活の質の低下、k) 汚職と腐敗した社会の発生は記されていないが、このような事態は、急速な投資の流入によって、対象地ですでに明確な形で起っている。
同「ノート」では、この後に各郡(District)における会合リストが続き(Annex 1)、そこにおいて、これまでになされたプロサバンナ事業についての説明要求項目が列挙されているが(pp.28-30)、要約にすぎず、「要求項目」のいくつかに事業推進者側の解釈も含まれている上に、その説明がどのようなものであったのかは、何も書かれていない。

6.小規模農民(自給的農業)へのコンセプト・ノートの考え方に関する疑問
同「ノート」では、小規模農民の農法と土地保有制度のあり方について、緑の革命になぞらえられるような「農業革命」の早期遂行の方針が提起されており、これが同「ノート」の中心部分を構成している。この考え方は一口に言い表せば「移動耕作から定着農業へ(Transformation from shifting cultivation to settled farming)」であると書かれている。この戦略を取る必要性を強調するために、現状は移動耕作が主体であり、それは生産性が低く土地保全に対処できないものであり、また人口増加率が高いため移動耕作のサイクルで休閑期間の短縮をもたらし、将来的には行き詰るほかはないと強調する(pp.7-9)。
また移動耕作に森林減少の責任を負わせるという、アジアの例で否定されている概念を用い、大規模企業による森林伐採(違法伐採・植林や開墾のための伐採)という真の元凶を示していない。これらを証明するためのデータとして、2011年の19年後(すなわち2030年)の1人当たり生産高と人口増加のマクロデータを用い、現状のままと定着農業となった時の数値を比較して、定着農業への移行が不可欠であると主張しているのは作為的である(Annex 2 参照)。なお、真に森林伐採を問題と考えるのであれば、なぜ森林保護のターゲット(数値を含む)や手法が何も書かれていないのか疑問である。同「ノート」で小農と並列に置かれた「大規模/商業的農業」が、数千ヘクタールもの森林を1年以内に一気に破壊している現状がまったく言及されない点も同様である。

7.以上の論議に明らかな傾向として見られるのは、「緑の革命」的転換が、農民の差し迫った必要から発した論議ではなく、外部者による長期的、一般的な予測を基とした戦略の思想から発していることが見て取れる。しかしその論議を、差し迫った開発計画の中心的命題として、計画遂行の根拠に直結させていることは大きな問題を惹き起こす。現在小農が行なっている農法の分析と、その有効性を認めるデータ収集が現地調査の設計には入っておらず、移動耕作の多様性とその変化、例えば多くの農民は徐々に住居を固定し、換金作物を含む休閑と耕作を繰り返す新しい輪作農法を発展させている(例:JIRCAS,山田隆一、飛田哲の調査)などの事実を取り入れていないため、論議が極端に単純化されている。移動耕作の変化という長期的課題を現在一気に解決しようとして強行すれば、現地の社会経済的な状況、すなわち現在の住民の生活に大混乱をもたらすことは必須である。農業生産も意図に反して停滞を余儀なくされるであろう。

8.土地使用権利証取得(DUAT Acquisition)の問題点(pp.16~18, p.23)
小農に関する開発戦略の第一に挙げられているのが、DUATの取得に関するものである。小農の土地使用の確定にDUAT権利証の取得が必要と考えられているが、モザンビークの1997年土地法では、小農の使用している土地は、慣習法のもとに、権利証なしでも占有と使用が認められている。
土地法の第12条には次のように書かれている。
The right of land use and benefit is acquired by
a) occupancy by individual persons and by local communities in accordance with customary norms and practices which do not contradict the Constitution.
b) occupancy by individual national persons who have been using the land in good faith for at least ten years,
c) authorization of an application submitted by an individual or cooperate person in the manner established by this Law,
さらに第13条には次のように書かれている。
2. The absence of title shall not prejudice the right of land use and benefit acquired through occupancy in terms of sub-paragraphs a) and b) of the previous article

 従って小農は、”title” を確定しなくとも、上記の条件に合えば、土地を使い続けることができる。DUAT権利証の取得を強制する政府の方針があるとすれば、それは土地を担保として農民への金融を行なう手段であるか、またはDUATの小農の権利範囲を測定し狭め、権利の及んでいない部分を未利用地として、他の要請(例えばアグリビジネスの土地取得の要請)に応えることのできる土地を確保しておきたい、という隠れた理由があるからと考えられる。従って、「定着農業」を作り出すためにDUAT 権利証の取得が必要であるとの主張は、農民金融およびアグリビジネスへの土地提供という危険性の高いもの以外の理由を提示できない。アフリカの近隣諸国でも、土地への慣習法上の権利認定と権利証の取得とは、土地保有の実態を勘案して、一応切り離されて考えられている 。

9. DUAT 権利証の確定の際の農民の権利の範囲
DUAT権利の確定を、慣習法で保護された権利に基づいて考えれば、個々の農家のDUATの範囲は、慣習的共同体が存在する場合は、農民が属しているその慣習法上の共同体(Community)の土地の範囲が確定さえしていれば、その範囲内に占有権が得られていることになるため、個別の権利証は必要条件ではない。小農のDUAT権利確定(titling)を急いで実行すれば、権利の範囲は現に耕作している(一時期の)農地と家屋地に限られてしまうという不合理が残る。
小農には休閑地に対する使用権、場合によっては林地や放牧地などにも使用権を持っており、これらは現時点での耕地の数倍の面積にのぼる。これは、ProSAVANA-PDのレポート1でも的確に指摘されている点である。この面積は共同体の場合は当然考慮されている農民にとっての生活上、必要不可欠の土地である。また農民の耕地は分散していることが多く、それぞれの地片には、土壌の性質などの違いにより、異なる作物を栽培していることが、モザンビークの各種の農業統計からも明らかになっている。農民らは、これらの地片(0.5ヘクタール前後)を巧みに使い分けて生産をしている(District Profiles 2005)。DUAT権利の範囲確定には、これらの農民の権利を侵さないようにする必要がある。
また世代を経ることによる土地拡大の必要や、近隣世帯との調整など、範囲確定(demarcation)には時間がかかるのが常である。現在、モザンビークでは土地をどのように農民の権利を擁護しながら活用していくべきかについての議論は始まったばかりである。そのような中、小農支援という点から大いに問題がある動きが、ドナーの側からも出ている(G8 New Alliance for Food Security and Nutrition )。プロサバンナ対象地だけをモザンビーク国家の全体の文脈から切り離し、当事者不在のまま、一方の方向性だけを急いで推進すべきではない。なお、事業対象地が3州19郡におよび、社会環境・政治経済並びに農業・土地条件が大きく異なっている点については、同「ノート」は何も検討しないまま、ある特定の方向の「課題」と一つの解決策にのみ結論を誘導するという問題を抱えている。

10. 契約栽培(Contract farming)の問題点
アグリビジネスと小農、中農、大農と契約栽培は、農業投入財や市場へのアクセスを確保し、バリューチェーンを作り出す方法として、「コンセプト・ノート」で積極的に推奨されている。また契約栽培を小農と結ぶ際に、土地使用権確定とセットにすることによって、定着農業を急速に導入するきっかけを作り出そうとしていることは、すでに実験として開始されている「プロサバンナ開発イニシアティブ基金(PDIF)」の例からも明らかである 。しかし契約栽培は、多くの問題が、過去の例からも指摘されている。その中には、(a)生産物の低価格の買取り、(b)特定の種子や投入財の押し付け、(c)契約不履行(天候不良などによる生産量の低下などによる)の一方的な農民への責任転嫁、(d)債務を梃にした土地没収、がある。これらが起らないような監視体制を政府が取る事ができない場合は、農民が被害を蒙る公算が大きい。



(2013年12月16日)

吉田昌夫(特定非営利活動法人 アフリカ日本協議会)
池上甲一(近畿大学)
舩田クラーセンさやか(東京外国語大学大学院)
米川正子(立教大学)
津山直子 (明治学院大学国際平和研究所)
渡辺直子(特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター)
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Author:MozambiqueKaihatsu
「モザンビーク開発を考える市民の会」の公式サイトへようこそ!本サイトでは、モザンビークの草の根の人びとの側に立った現地・日本・世界の情報共有を行っています。特に、現地住民に他大な影響を及ぼす日本のODA農業開発事業「プロサバンナ」や投資「鉱物資源開発」に注目しつつ、モデルとされるブラジル・セラード開発についての議論も紹介。国際的な食・農・土地を巡る動きも追っています。

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