前の記事に引き続き、モザンビークの天然ガス開発問題に関する8月からの主要記事の日本語のものをまとめさせていただきましたのでご参考にご覧ください。多少省略した文章を載せていますので、全文を読みたい方は記事タイトルをクリックすると実際の記事に飛べるようになっております。
IS系、モザンビークの港占領 三井物産などのガス田開発 掲載元:朝日新聞デジタル 2020年8月13日
アフリカ南部にあるモザンビークで12日、過激派組織「イスラム国」(IS)系とみられる武装勢力が、北部モシンボアダプライアの拠点港を襲撃して占拠した。AFP通信が軍当局者らの話として報じた。周辺では三井物産などが投資する大型天然ガス田の開発が進められており、治安の悪化で事業に影響が出る恐れがある。
英BBCによると、襲撃は数日にわたって続き、港を守っていた軍兵士が小型船で避難。
ISとの関係は不明な点も多いが、アフリカに拠点を置くIS系の組織がたびたび犯行声明を出していた。
周辺地区では、世界有数の天然ガス田が発見されており、各国の企業が参画して開発計画が進められている。三井物産なども権益を保有しており、ホームページでは、天然ガスの生産・液化から液化天然ガス(LNG)の輸送までを行う事業と説明している。(ヨハネスブルク=石原孝)
モザンビーク、IS系が港占拠・交戦 日本のガス事業進行中の一帯 掲載元:JIJI.COM 2020年8月14日
【マプトAFP時事】三井物産などが参画し天然ガス開発が行われている東アフリカのモザンビーク北東部で12日、過激派組織「イスラム国」(IS)とつながりがある武装勢力が主要港を襲撃し、占拠した。ネト国防相は13日、治安部隊が港奪還に向け「激戦」を継続中と明らかにした。
占拠されたのは、アフリカ最大級の液化天然ガス(LNG)プロジェクトが進んでいる港町。
モザンビーク ガス田近くの港を武装集団が占拠 政府軍と戦闘に 掲載元:NHK 2020年8月15日
アフリカ南部のモザンビークで、日本企業も開発に参加している沖合のガス田に近い港が、IS=イスラミックステートを名乗る武装グループに占拠され、現地のメディアは、政府軍との間で激しい戦闘になっていると伝えています。
これについてネト国防相は、13日、記者会見し、「武装グループの戦闘員たちは一般市民のふりをして入り込んでから攻撃を始め、住民が犠牲になった」と述べ、複数の住民が死亡したと明らかにしました。
現地のメディアは、双方の間で激しい戦闘になっていると伝えています。
モザンビークの北部では、3年前からIS=イスラミックステートを名乗る武装グループが警察署や軍の施設などへの襲撃を繰り返していて、これまでに1500人以上が死亡し、およそ25万人が家を失い、避難を余儀なくされたとしています。
北部の沖合では、天然ガスの大規模な開発が進められ、経済成長の起爆剤になると期待されていて、日本企業も進出しており、治安の悪化が懸念されています。
モザンビークでIS系の武装勢力が主要港占拠 掲載元:Viewpoint Opinion and Column 2020年8月16日
三井物産などが参画し天然ガス開発が行われている東アフリカのモザンビーク北東部で12日、過激派組織「イスラム国」(IS)とつながりがある武装勢力が主要港を襲撃し、占拠した。
占拠されたのは、アフリカ最大級の液化天然ガス(LNG)プロジェクトが進んでいる港町モシンボアダプライア。
ネト国防相は「軍や治安部隊が混乱を収束させようと頑張っているが、非常に緊迫しており、状況は流動的だ」と説明した。周辺の村々に武装勢力は民間人を装って侵入し、略奪し、民間人や治安部隊を殺害するテロ行為に及んだと非難した。武装勢力は「イスラム国中央アフリカ州(ISCAP)」を名乗っている。
戦闘の現場となっているカーボデルガド州では2017年以降、武装勢力の襲撃が相次ぎ、治安が不安定化。これまでに25万人以上が家を追われ、1500人を超える人々が犠牲になった。(マプトAFP時事)
モザンビーク過激派台頭 「イスラム国」名乗りテロ 南ア、介入検討か 掲載元:読売新聞 2020年8月24日
【ヨハネスブルク=深沢亮爾】アフリカ南部モザンビークでイスラム過激派組織「イスラム国」を名乗る武装勢力が台頭し、政情が比較的安定する周辺国が脅威認識を高めている。堅調な経済発展を遂げてきたモザンビークでは、日本企業も参画する世界有数の天然ガス田開発が行われており、影響が懸念されている。
■日本も権益
武装勢力は「イスラム国中部アフリカ州」と名乗り、2017年以降、モザンビーク最北部テロを活発化させ、市民ら1000人以上を殺害した。テロの犯行声明動画などから、構成員の大半は地元出身と考えられるが、中東の「イスラム国」との関係はわかっていない。
地元メディアなどによると、今月12日には、沖合のガス田に近接する港町モシンボアダプライアを政府軍との戦闘の末に制圧した。
ガス田へのテロ警告は確認されていないが、事態が長期化すれば開発事業に影響する可能性もある。
■周辺国の懸念
武装勢力が隣国に伸長する懸念もある。南アフリカでは民家から「イスラム国」の旗や爆弾の製造方法が記された書類が発見され、「既に国内に根を張っている」としてモザンビークとの関連を疑う見方が出ている。
こうした事態を受け、周辺国など16か国で構成する南部アフリカ開発共同体(SADC)は17日、首脳テレビ会議を開き、モザンビーク政府への支援を確認した。北隣のタンザニアは国境地帯で掃討作戦に向けて部隊を展開した模様だ。地域大国・南アも軍事介入を検討していると報じられている。
キリスト教徒が主体のモザンビークは、国民の2割がイスラム教徒だ。ポルトガルによる植民地時代と独立後の社会主義政権時代に冷遇され、イスラム教徒の多いカボ・デルガード州は開発の遅れが指摘されている。
日本のエネルギー安定供給に黄色信号?「イスラム国」が天然ガス開発中のモザンビーク北部を占拠 掲載元:FNNプライムオンライン 2020年9月1日
アフリカ最大の天然ガス開発地 近くの街を占拠「イスラム国」は、アフリカ南部モザンビークの北部に位置する街と港を制圧し、支配下においたと発表した。
モザンビーク北部では、2017年からイスラム過激派による襲撃が頻発し、既に1500人以上が死亡、避難民は25万人を超えた。「イスラム国」入りを誓った武装勢力は、2020年3月にはカボデルガド州の3地区を占拠して領域支配を実行、5月にはイスラム法により統治を行うカリフ制国家建設を目標に掲げた。
この一連の出来事は、実は日本の一般市民生活にも大きく関係している。
モシンボアダプライアから60キロ離れた地点には、アフリカ最大の天然ガス掘削開発地があり、その開発には三井物産と独立行政法人の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が巨額の出資をし、権益の20%を保有しているのだ。
三井物産は2020年6月、モザンビークの「LNG(液化天然ガス)プロジェクトの最終投資決断」を行ったと発表。ホームページでは「本プロジェクトは、ゴルフィーニョ・アトゥン・ガス田を開発対象として、天然ガスの生産・液化からLNGの輸送までを行う上中流一体型事業です。2024年より年間1200万トンのLNGを生産する計画です」と説明している。
7月2日には、同LNGプロジェクトに国際協力銀行(JBIC)や三菱UFJ銀行、みずほ銀行などが144億ドル(約1.5兆円)の協調融資を実施する方針を固めたことが明らかになった。
エネルギー安定供給の“希望の星”が抱える治安リスク日本が官民一体で同プロジェクトに巨額の投融資を行う最大の目的は、エネルギーの安定供給だ。
エネルギー資源のほとんどを輸入に依存する日本にとって、エネルギーの安定供給は死活問題である。しかし、日本がエネルギー資源の多くを依存する中東の治安情勢は不安定さを増しており、エネルギー安定供給のリスクが顕在化している。
しかし、今回の事件は、同プロジェクト自体が深刻な治安リスクに晒されている現実を露呈させた。「イスラム国」は今回制圧したモシンボアダプライアは「十字軍のガス企業拠点の近く」だと明言している。
モシンボアダプライア港は同プロジェクトの輸送拠点港だったが、厳重に警備されていたはずの同港はわずか数日間の戦闘で「イスラム国」に奪取され、国軍兵士は敗走したと伝えられた。
同プロジェクト現場への直接的な攻撃はまだないが、6月には三井物産らとともに同プロジェクトを運営する仏資源大手・トタルの下請け会社であるフェニックス建設の車両が襲撃され、8人が死亡する事件が発生している。
モザンビーク軍は街と港を奪還できるのかイスラム過激派は一般に、資源開発を行う外国企業や異教徒を「イスラム教徒の富を収奪する十字軍」とみなし、攻撃対象とする。
遠いアフリカの国で今起こっている「イスラム国」との戦いは、私たち日本人が将来にわたり、安定的に電気やガスを使用できるかどうかという問題に直結している。
モザンビークのプロジェクトは、もはや日本一国でどうにかできるような問題では全くなく、多くの国による軍事的、財政的支援なしには立ち行かないような状況に置かれていると認識すべきであろう。
【執筆:イスラム思想研究者 飯山陽】
コロナ禍でも進む天然ガス開発(モザンビーク)
中長期的に経済成長が見込まれ、インフラや農林水産業などに商機 掲載元:JETRO 2020年9月16日
2010年にモザンビーク北部カーボデルガド州の沖合ロブマ堆積盆地で、世界最大級の天然ガスの埋蔵量が確認された。
天然ガス開発で経済成長が見込まれるフランスのトタルや三井物産が参画するエリア1鉱区は、2024年の生産開始をめどに開発が進められている。モザンビークを代表する国家的プロジェクトである上に、東北電力や東京ガスなどとの売買契約が締結されている。JBICと邦銀を合わせたアフリカ向け融資案件で過去最大規模となる。
インフラ開発や農林水産業にもビジネスチャンス1人当たりGDPが500ドル未満(世界銀行2019年)と低所得国に位置付けられるモザンビークにとって、外国政府・企業の支援や参画によるインフラ整備は政府の中でも最優先事項だ。特に、北部のナカラ港と内陸国のマラウイやザンビアを結ぶ「ナカラ回廊」の整備には、日本政府も2014年に700億円規模の支援を表明した。三井物産とブラジル資源大手バーレが同回廊で整備・運営を行うナカラ鉄道港湾運営事業には、JBICや日本のメガバンク3行などによる総額27億3,000万ドル規模の国際協調融資が実施されている。
モザンビークには、ODAを通じたインフラ開発プロジェクトが多く実施されてきた。
日本の総合商社や建設企業などが注目しているのは、IMFによる融資再開に向けた協議の進展だ。2016年に発覚した総額20億ドルの政府の「非開示債務問題」により、IMFをはじめ主要援助国からの財政支援が凍結され、JICAによる新規の有償資金協力プロジェクトも停止している。しかしその後、政府は財政再建やマクロ経済の安定化に努め、IMFは4月にモザンビークに対して、ラピッド・クレジット・ファシリティー(RCF)による融資を決定した。
モザンビークには農林水産業のポテンシャルがある。日本向けにゴマ油やハマグリ、タコなども輸出され、関連日本企業も現地に進出している。課題としては、広大な国土やポテンシャルを持ちながら、主要穀物以外の食料品を隣国南アなどからの輸入に頼らざるを得ないことだ。このことから、農業開発と食料生産拡大につながる肥料や農業資機材などの潜在的需要があり、日本企業にとってのビジネスチャンスにもなるだろう。今後の中長期的な同国の経済成長と、それに伴う消費の拡大が消費財をはじめ日本企業にとって新たな商機となり得る。
与野党間の和平合意が問題解決への展望を開く他方、北部の治安悪化は天然ガス開発を脅かす懸念事項となっている。天然ガス開発が進むカーボデルガド州では2017年10月以来、イスラム系を自称する武装勢力が同州北東部で住民や民間車両、警察署などを襲撃する事件が頻発する。2019年6月には、イスラム国(ISIS)も関与を主張するようになった。
モザンビーク北部、混迷 イスラム過激派攻勢 住民30万人避難 掲載元:毎日新聞 2020年10月8日
アフリカ南部モザンビーク北部のカボデルガド州でイスラム過激派が攻勢を強め、住民30万人以上が地元を追われて避難する事態になっている。モザンビーク政府の対テロ作戦は十分な成果を上げておらず、混乱は長期化する恐れが出ている。
◇政府軍、虐待疑惑も
同州では2017年ごろから過激派組織「イスラム国」(IS)支持を掲げる地元組織の活動が活発となり、地元の町や村を襲撃している。過激派は町や幹線道路を襲撃して支配下に置くなど、政府軍と一進一退の攻防を続けている模様だ。
現在は多くの住民が住む場所を追われ、主に国内で避難している。WFPは食料不足の深刻化に伴い、毎月470万ドル(約5億円)の資金が必要になるとして国際社会に支援を要請した。日本政府は9月23日、WFPを通じてモザンビークに2億円の食料援助を行うと発表した。
一方、過激派を抑え込めないモザンビーク政府は国外に支援を求めている。
こうした混乱の中でモザンビーク政府軍が住民や拘束した反乱軍を虐待しているとの疑惑も浮上。
欧州議会も9月17日、モザンビークの人権状況に関する決議を採択した。「テロに対処するための軍の装備が貧弱で、周辺国に反乱が広がり地域が不安定化する恐れがある」と認める一方で、軍の虐待疑惑にも懸念を示した。
同州沖には大規模な天然ガス田が確認されており、日系企業も参加する液化天然ガス(LNG)精製施設の計画が進んでいる。治安悪化が計画に悪影響を及ぼす可能性もある。【平野光芳】
北部治安問題対策で国際社会に支援要請 掲載元:JETROビジネス短信
モザンビークの独立系メディア「カルタ・デ・モザンビーク」は9月22日、モザンビーク北部で活動している武装勢力への対応を強化するため、同国政府がEUに正式な支援を求めたと報じた。EUなど諸外国はこれまでも同国への支援意思を表明していたが、モザンビークから具体的な要請が出るのは今回が初めてとなる。
決議文書では、8月12日に発生した武装勢力によるモシンボア・ダ・プライア(天然ガス開発プロジェクトの物流拠点となる港町)の占拠について、武装勢力が規模を拡大していることを示唆する内容が取り上げられている。ベルナルド・ラファエル警察長官は、同港の占拠は解放されたと述べたが、会見までの1カ月以上の間に、周辺の幹線道路や村落では断続的に襲撃が発生していた。
三井物産も参画するエリア1天然ガス田開発コンソーシアム筆頭のフランス資源大手トタルのパトリック・プヤンヌ最高経営責任者(CEO)は9月12日、フィリッペ・ニュシ大統領と北部治安問題について会談を持ち、10月1日の記者会見で欧州諸国へモザンビークへの支援を呼び掛けた(ブルームバーグ10月2日)。
モザンビーク政府も、ニュシ大統領が9月23日の国連総会で公開されたビデオ演説の中で国際社会の支援を受け入れると表明するなど、EUにとどまらない外部からの介入受け入れを本格的に検討しているとみられる。
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