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【質問主意書】プロサバンナ事業(井上哲士議員)

質問第一五九号

「プロサバンナ事業」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和二年六月十六日

井上 哲士


       参議院議長 山東 昭子 殿


   「プロサバンナ事業」に関する質問主意書

 二〇〇九年九月に日本・ブラジル・モザンビークの間で調印された「三角協力による熱帯サバンナ農業開発計画」(以下「プロサバンナ事業」という。)については、これまでに国会審議を通して問題を指摘してきたところである。
 プロサバンナ事業は、ブラジルとともに、モザンビーク北部(三州十九郡)を対象に、三つの技術協力プロジェクトを通じて進められてきた。二〇一一年のProSAVANA―PI事業を皮切りに、二〇一二年にProSAVANA―PD、二〇一三年にProSAVANA―PEMが開始された。
 しかし、二〇一二年九月、事業対象地の小農が加盟するモザンビーク最大の小農組織・全国農民連合(UNAC)が事業に反対を表明し、これまで数々の声明を日本の外務大臣や独立行政法人日本国際協力機構(JICA)理事長に提出してきた。この一部は国会でも取り上げられている。二〇一七年四月には、事業対象地の住民十一名が、JICA環境社会配慮ガイドラインに基づく異議申立を行った。これを受けて「モザンビーク弁護士会(OAM)」は、これらの異議申立人を含む事業対象地住民やモザンビーク市民の訴えに基づき、モザンビークのマプト市行政裁判所に訴えを起こした(訴訟番号第百二十番/2017―CA)。
 JICAのガイドラインについては、日本の三名の審査役による「調査報告」が二〇一七年十一月一日に発表され「JICAのガイドライン違反は認められないと判断する」との結論が導かれている。他方、その後二〇一八年八月八日に、モザンビーク最高裁判所によって農業省に通知されたマプト行政裁判所による判決では、プロサバンナ事業並びに「プロサバンナ調整室を所管するモザンビーク農業食料安全保障省(以下「農業省」という。)」が憲法並びに国内法に違反しているとの弁護士会の訴えを、「裁判官全員一致で受け入れる」との判決が下された(地裁判決番号第三十番/TACM/18)。
 以上を踏まえ、以下質問する。

一 プロサバンナ事業に関する裁判事実と判決内容に関する確認

1 モザンビーク共和国憲法上、行政裁判所は、行政組織ではなく、裁判所の一機関、すなわち司法組織である。また、モザンビークの法制度上、行政裁判所の判決が覆る制度がない。これら二点について、日本政府として認識しているか。

2 二〇二〇年二月十九日時点で、外務省もJICAも、当該判決が確定しているか否かについて把握していなかった。その上で、判決確定の有無について、外務省としてモザンビーク当局に確認する旨約束されたが、どう確認されたのか。

3 二〇一八年八月に判決が出されて以来、本年二月まで、約一年半もの間、判決確定の有無について確認をしてこなかった理由は何か。

4 当該判決では、「モザンビーク共和国の名において判決を下す。マプト市行政裁判所は、裁判官全員一致で、原告「モザンビーク弁護士会(OAM)」による訴えを受け入れる。この結果を受けて、被告である農業食料安全保障省に対して、市民の自由と権利を侵害する可能性のある計画・活動および決定に関する公益に関する情報―特にプロサバンナ事業によって影響を受けるコミュニティの土地・食料安全保障・栄養に関連する情報―の全面開示を命じる。開示までの期間は十日以内とする」と記載されているが、日本政府はどう承知しているか。

5 また当該判決では、農業省が裁判所の呼び出しに応じず、一度も反論陳述を行っていないことが指摘されている。日本は、一九九〇年代から、国連とともに、モザンビークの民主化や「法治国家」体制の支援を行ってきた。そのモザンビーク共和国において、被告として裁判所の呼び出しに応じなかった農業省の姿勢は、現地市民社会からも「法の支配」や三権分立を軽視するものと指摘されているが、日本政府の見解如何。

二 判決の履行に関する確認
 外務省は、本年五月二十五日、当該判決後にモザンビーク農業省が行政裁判所に提出した「すべての文書」として、モザンビーク農業大臣名発マプト市行政裁判所宛て書簡(二〇一八年八月三十日。以下「行政裁判所宛て書簡」という。)、行政裁判所宛て書簡の添付文書として、(ア)モザンビーク農業大臣発マプト市行政裁判所宛て文書(二〇一七年八月)、(イ)モザンビーク農業大臣発モザンビーク市民社会宛て文書(市民社会からの「プロサバンナ事業の緊急停止と再考を求める公開書簡」に対する回答。二〇一四年五月)、(ウ)プロサバンナ本部から弁護士連合宛て文書(二〇一六年二月)、(エ)プロサバンナ本部から弁護士連合宛て文書(二〇一七年五月)の以上五点を示した。以下、質問する。

1 (ア)の文書の署名欄には、二〇一七年八月との記載があるが、日付が記載されていない。(ア)の実際の裁判所への提出日について、提出時の裁判所の受領印などを確認の上、示されたい。

2 行政裁判所宛て書簡では、主として、次の三点が主張されている。(1)弁護士会による主張に農業省が異議を示さなかったという点は事実でない(添付(ア))。(2)農業省はプロサバンナ事業についての情報を、コミュニティなど関係者に対し開示し、これは添付文書で証明されている(添付(イ)以下)。(3)インターネット上に公開されている情報にアクセスが可能であり、要請があればさらに情報を公開する。一方、行政裁判所宛て書簡は行政裁判所からの判決の通知は、同月八日だったことを明らかにしているが、行政裁判所宛て書簡の日付は、二〇一八年八月三十日である。判決が求めた開示期限は同月十八日までであり、行政裁判所宛て書簡はその期限後に出されている。その理由を示されたい。また、そもそも農業省は、裁判所の呼び出しに応じず、本来裁判が行われている時に陳述すべき主張を、裁判がすでに結審し、判決の履行が求められている段階で行っている。その理由を示されたい。これらの事実にもかかわらず、日本政府として判決が履行されていると判断するのであれば、その理由は何か。具体的に示されたい。

3 前記二の1で示した行政裁判所宛て書簡の四点の添付文書は、いずれも判決の前のものであり、かつ弁護士会並びに市民社会側がすでに所有する文書である。裁判は、これらの文書を踏まえて進められ、事業に関する情報の不透明性に対して、憲法と法令に示された「国民の知る権利」という基本的人権の侵害であるとの判決が下されている。日本政府として、すでに公開・提供され、判決の資料とされた文書を、しかも判決後に、再度裁判所に提出することを、当該判決の適切な履行に値すると考えるのであれば、その理由は何か。

三 一連の裁判・判決への外務省・JICAの対応

1 今回の裁判では、日本の援助事業に関連し、「基本的人権の侵害」、「憲法と法令違反」との判決が下された。外務省は今年度予算で「法治国家体制の強化」を謳っているが、援助に関して、対象国の司法判断を蔑ろにすることは、これに反していると考えるが、日本政府の見解如何。

2 また、JICA環境社会配慮ガイドラインでは、「2.JICAは、相手国及び当該地方の政府等が定めた環境や地域社会に関する法令や基準等を遵守しているか(中略)を確認する」と明記されている。これを踏まえれば、JICAが、援助事業のカウンターパート(農業省)がモザンビークの法令を遵守しているかを確認すべき立場にあると考えるが、日本政府の見解如何。

3 プロサバンナ事業については、二〇一七年四月に、事業対象地の住民十一名が行った、JICA環境社会配慮ガイドラインに基づく異議申立に対し、日本の三名の審査役による「調査報告」が二〇一七年十一月一日に発表され「JICAのガイドライン違反は認められないと判断する」との結論が導かれている。その後、「審査役」は、JICAに対し、年に一度の「レポート」において、異議申立審査のフォローアップを行うことになっており、担当部署(農村開発部とアフリカ部、現地事務所)へのヒアリングがなされたことが記されているが、現在まで同「レポート」には、行政裁判所の判決についての言及は一切ない。担当部署が、審査役(事務局を含む)に判決事実を伝えたか否かについて、明らかにされたい。伝えていない場合にはその理由を示されたい。

四 JICA、プロサバンナ事業への税金支出

1 援助対象国において違憲判決が出た事業にこれ以上日本の税金を使うべきではないと考えるが、日本政府の見解如何。

2 今年度の予算で、プロサバンナ事業に支出された資金があれば、ProSAVANA―PD事業にいくら、ProSAVANA―PEM事業にいくらのように、具体的に述べられたい。それぞれ日本のコンサルタント企業への拠出額も明らかにされたい。

3 ProSAVANA―PEMは昨年五月で完了の予定が一年延期された。よって本年五月で終了しており、これ以上の予算使用はないものと考えるが、その理解で正しいか。もし違う場合、具体的に状況を説明の上、その理由も示されたい。

4 外務省とJICAの担当者は、プロサバンナ事業をめぐる裁判とその判決について、モザンビーク弁護士会が判決の翌月の九月に記者会見するまで「知らなかった」と主張し、農業省からJICA並びに外務省が報告を受けたのは、判決から二ヶ月を経た二〇一八年十月二十九日であったとの説明をしている。しかし、訴えられた「プロサバンナ調整室を所管するモザンビーク農業省」には、設立当初からJICAが契約スタッフを派遣しており、二〇一六年七月から現在まで着任するスタッフ(Eduarudo Costa、以下「当該スタッフ」という。)へのJICAの指示書には、「2.プロサバンナ本部の機能強化支援」として、「プロサバンナに関する重要な情報が、タイムリーに、農業省幹部内、JICA、ブラジル政府で共有されることを確実にする」と記載されている。しかし、当該スタッフの月例報告に、「裁判やその判決に関する記述がない」ことが明らかになっている。このことは、当該スタッフが指示書通りに業務を行わなかったことに原因があるのか、あるいはJICAが適正な事業管理をできていなかったことが原因か。見解を明らかにされたい。また、これまでの当該スタッフとの契約金額を年度ごとに示されたい。

五 JICAホームページでの小農リーダーへの名指し非難
 プロサバンナ事業に関連し、違憲判決を受けて、日本に来日したモザンビーク最大の小農運動のリーダー(事業対象地住民)に対し、昨年九月、JICAは一方的な名指し非難文章をJICAホームページに掲載した。公的機関による人権侵害として、多くの国会議員、本邦NGO関係者、市民が、繰り返し抗議してきたが、現在も掲載されたままである。これは、「政府としては、一人ひとりの権利が保障され、人々が安心して経済社会活動に従事し、社会が公正かつ安定的に運営されることが不可欠であると考えており、我が国はそうした発展の前提となる基盤を強化する観点から、自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値の共有や、平和で安定し、安全な社会の実現のための支援を行う考えである」と回答した「プロサバンナ事業」に関する質問主意書(第二百回国会質問第九七号)に対する答弁(内閣参質二〇〇第九七号)に反しており、同文章の撤回・削除が必要と考えるが、日本政府の見解如何。

六 COVID―19感染拡大を受けた対応
 モザンビークにおけるCOVID―19の感染の広がりを日本政府はどう把握しているのか。それにより、プロサバンナ事業にどのような影響が出ており、どのような対応をとっているのか。

  右質問する。



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Author:MozambiqueKaihatsu
「モザンビーク開発を考える市民の会」の公式サイトへようこそ!本サイトでは、モザンビークの草の根の人びとの側に立った現地・日本・世界の情報共有を行っています。特に、現地住民に他大な影響を及ぼす日本のODA農業開発事業「プロサバンナ」や投資「鉱物資源開発」に注目しつつ、モデルとされるブラジル・セラード開発についての議論も紹介。国際的な食・農・土地を巡る動きも追っています。

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