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【分析】鉱物資源の宝庫テテ州で何が起きているのか?

日本の新日鉄住金も進出しているモザンビーク北西部のテテ州で、ブラジル鉱物資源企業と住民の衝突に端を発する政情不安が続いています。ついに、元反政府ゲリラが動き始め、7人の警察が攻撃され、鉄道封鎖される可能性が出ています。政府軍も動き始めつつあります。

なお、今回問題になっているリオティントとヴァレのすぐ境界線にある鉱区が新日鉄住金の鉱区です。したがって、現在起きている事態と無関係ではありません。

■テテ州の大多数の地域が「鉱区」として承認・指定されてしまっていることが目にみえる地図を掲載しています
http://afriqclass.exblog.jp/17974287/

これらはすべて、住民不在の急いだ大規模投資の帰結です。
ついに、軍事衝突に備えた大量の武器輸入を政府が開始しました。
平和をも不安定化させる投資。

それを後押ししている現在の日本の援助や政策も、問い直されるべきものです。
住民の犠牲の上に呼びこまれる大規模投資と援助の問題が、再びアフリカ、そして日本で問われています。


そもそも問題は、
(1)農民から広大な土地を奪ったこと、
(2)補償をちゃんとしなかったこと、
(3)政府が住民の側ではなく企業の側に立って抑圧的な行動をとっていること、
(4)投資が住民の生活向上に役立っていないこと、
(5)政権関係のごく一部だけが豊かになっていること、
への広範な不満が人々の間であることによります。

そして、このような状態を知らぬままに、回廊プロジェクトと称してこの地域に入り込もうとする日本の援助・企業の問題(ナカラ回廊プロジェクト、プロサバンナ)からも、他人事ではありません。

このような事態を繰り返し、警告したにもかかわらず、日本はTICAD Vに際し、モザンビークの現政権と二国間投資協定を締結してしまいました。
■日・モザンビーク投資協定の署名(2013年6月1日)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/page5_000168.html


■日経新聞(2013年4月4日)
モザンビーク炭鉱の採掘権取得 新日鉄住金・ポスコなど
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD0407E_U3A400C1TJ1000/
 新日鉄住金は4日、同社や韓国ポスコなどが共同で計画しているアフリカ南部モザンビークでの炭鉱開発について、現地政府から3日付で事業化に必要となる採掘権を取得したと発表した。今後詳細な事業計画を詰めて開発に着手し、2019年には鉄鋼原料炭で年産500万トンのフル生産体制を目指す。
■産経新聞(2013年4月4日)
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130404/biz13040413450009-n1.htm
推定石炭埋蔵量は約14億トンで、製鉄に使う原料炭年約500万トンの生産量が見込まれている。このうち新日鉄住金グループは、年間輸入量の6%程度に当たる年約170万トンの原料炭を確保する見通し。

■新日鉄住金の進出先のRevuboe鉱区の情報
http://www.revuboe.com/home
The Moatize Basin in Mozambique is the leading emerging coking coal province in the world. Our Revuboè Coal project in Tete province is bordered by both Rio Tinto's Benga and Zambeze projects and Vale's Moatize project.

この住民との衝突については、以下のようにまとめられます。
①2008年に同地に進出したVale社によって、5000家族が土地収用された。
②これら住民は、立ち退き・移転のプロセスや補償内容、その結果生じた生活苦について異議申し立てを2009年末から継続。
③その抗議の一環で、Vale社への補償内容見直しを求めるが拒否。再度の対話を求めて、道路封鎖。
④しかし、警察が強制排除を行い、住民が逮捕。その釈放を求めた住民が牢屋に集結。
⑤警察がついに催涙弾やゴム弾などを使って住民に発砲、負傷者が出た。
⑥警察はそれを否定。

これに関する代表のブログ記事
■続報:ブラジルVale社炭鉱の土地収用&移転への住民抗議のその後
http://afriqclass.exblog.jp/17653555/
■モザンビークで、ブラジル鉱物資源会社Valeの炭鉱道を住民が封鎖、警察が発砲3名負傷~市民社会の声明
http://afriqclass.exblog.jp/17644029/
■「ブラジル鉱業企業と地元住民の土地紛争:「死んでもここを動かない」
http://afriqclass.exblog.jp/17432081/
■「ビルマでの援助と土地収用とプロサバンナ問題」
http://afriqclass.exblog.jp/17288876/

Human Rights Watchの報告書
■Mozambique: Mining Resettlements Disrupt Food, Water:Government and Mining Companies Should Remedy Problems, Add Protections
http://www.hrw.org/news/2013/05/23/mozambique-mining-resettlements-disrupt-food-water
関連の記事
■Miners Vale, Rio Tinto accused of neglecting displaced Mozambicans(2013年5月23日)
http://www.reuters.com/article/2013/05/23/us-mozambique-mining-idUSBRE94M08D20130523


そして、ついにこれに乗じて、1977年-92年までモザンビークに戦争をもたらしたRENAMO(反政府ゲリラ)・現最大野党が、テテに焦点を合わせ始めました。

■Mozambique's Renamo threatens to paralyse vital coal railway
http://www.reuters.com/article/2013/06/19/mozambique-renamo-idUSL5N0EV1SD20130619
■Mozambique: Renamo Threatens to Block Road and Rail Traffic in the Center of Mozambique(2013年6月20日)
http://allafrica.com/stories/201306201160.html

テテは、日本の援助事業(ナカラ回廊プロジェクト)の西端にあたる地域であると同時に、プロサバンナとも関連づけられています。現地では、次のような問題提起がされています。

■UNAC全国年次総会声明文(ProSAVANAも、鉱業メガプロジェクト、大規模植林とともに批判されています)
http://afriqclass.exblog.jp/17790286/

2013年は地方都市選挙、来年は大統領選挙です。
激しい戦争を経験したこれらの地域では、かなり社会内部で不満が高まっています。


これにレナモは便乗しているだけという側面も確かにありますが、実は社会の広い範囲で現政権に対する批判や不満は広がりを見せています。「現政権を全面的に応援」しているように見える日本政府や企業にも、厳しい目が注がれるようになりつつあります。

これに対して、「反政府だ!」と揶揄する動きが、援助関係者の間であるといいます。
しかし、それはあまりに社会のことを知らないレッテル貼りであり、それほど社会について知らないままに「役立つ援助をしている」と自負するのは、大変残念なことです。

今問題提起している人や団体の多くが、与党の長年の支持者・支持基盤であることは、現地で周知の事実です。これは、長年にわたり政権与党の基盤であった医療関係者の何十日にも及ぶストライキに示されていますし、与党とともに歩んできた最大の農民組織・全国農民連盟UNACの以上の声明にも示されています。

この点についての記事
■援助関係者の間で実しやかに囁かれるウソ:現地からの声を理解しよとせず、抑圧側に立つ人達
http://afriqclass.exblog.jp/17943791

そして、ついにこのような事態に。
■Seven soldiers killed in Mozambique weapons store assault(2013年6月18日)
http://www.reuters.com/article/2013/06/18/us-mozambique-attack-idUSBRE95H0SN20130618
■Imports of military equipment
http://allafrica.com/stories/201306201160.html?page=2

日本の私たちが共に目指したいのは、誰ともどのような未来でしょうか?

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Author:MozambiqueKaihatsu
「モザンビーク開発を考える市民の会」の公式サイトへようこそ!本サイトでは、モザンビークの草の根の人びとの側に立った現地・日本・世界の情報共有を行っています。特に、現地住民に他大な影響を及ぼす日本のODA農業開発事業「プロサバンナ」や投資「鉱物資源開発」に注目しつつ、モデルとされるブラジル・セラード開発についての議論も紹介。国際的な食・農・土地を巡る動きも追っています。

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