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【議事録】院内集会(11/28)「日本が推進する経済開発モデルと人々の暮らしへの影響」 第二部(その2)

コメント:贄川恭子さん(WE21 ジャパン 理事)
 みなさんこんにちは。私も皆さんと同じように今日これまでお話を伺って非常に衝撃を受けています。私は今日、WE21を代表していています。WE21は神奈川を中心に56のチャリティーショップを運営しています。毎日そこでお買い物に来る市民の方たちと交流する場を持っていますので、本当に市民の目線で、また市民の感覚でコメントさせていただきたいと思います。
私たちの団体が最初にこの問題に関心を持ったのはTICAD V(アフリカ開発会議)が横浜で開催されたときに現地の方がいらしたときです。そのときにその方たちからこれは日本の皆さんの問題だと言われました。「みなさんの税金で行われているのだから、あなたたちの問題なのです」と言われて、この問題に取り組んできました。日本にも様々な課題があって、日時の迫るものから対応していくと、どうしても遠くのアフリカの問題が次の課題の問題になってしまいます。それを今日はとてもこれではいけないと感じています。今日もあなたたちの問題ですよと言われたのに加えて、「助けてください」と言われましたし、「JICAの姿勢はあなたたち日本の国民の姿勢と捉えられている」ということを言われまして、本当に重大な問題だと思っています。
私たちがこの問題を取り上げるとき、いつも二つの点から考えてきました。一つは市民として、そして税金の支払者としての私たちです。税金がODAにどう使われているかという観点からです。今日何かコメントをと言われて、今の時点でこの事業にどれだけお金が使われているのだろうかということを、少し調べてみようと思い、JICAのホームページをいろいろ見たのですが、どうしても金額が出てこなくてわかりませんでした。それで渡辺さんにお聞きしたら、先ほど「コミュニケーション戦略」に支払われている金額に加え、この事業全体のコンサルタント支出が昨年度末までに5.6億円と教えていただきました。
しかし、このような金額は普通では市民にはわからない。この活動に関わっているNGOの方たちが一生懸命情報公開請求をしたり、議員の方を通じてわかった金額らしいです。これがコンサルタント料というので、本当に市民感覚なのですが、次のようなことを思い出しました。そういえば東京オリンピックの誘致のときにもコンサルタント料というのが話題になったなと思い、あれっていくらだったからなと。あれは収賄にあたるかあたらないかという別の観点からでしたけれども、あれが2.3億円でした。
このコンサルタント料が、一部には市民社会の分断を行うために使われているのではないかと疑いがもたれていると聞きました。そういった活動も含めて、東京オリンピック誘致という話題になったコンサルタント料の2.2倍以上の金額が支払われているということにTax Payerとして非常に責任を感じました。

 税金の話とは別にもう一つ、私たちの食の問題というところから話の入り口を見つけています。モザンビークで開発されようとしている農地で作られようとしているのが大豆を含む農産物ということで、関心を寄せてきました。大豆製品は日本人に欠かせないものです。豆腐、みそ、しょうゆ、納豆など、特に健康志向が最近強くなっていますから、豆腐売り場に行くと、国産大豆で作っているか、遺伝子組み換えでないかという表示を一生懸命アピールしようとしています。そういうときに遺伝子組み換えの影響を受けないものを作れる場所として、ここが注目されているということは、ここで作られたものが私たちの口に直接入ってくるのだということで、非常に真剣に受け止めなくてはいけないと思っております。ただ商品として並んでいると、私たちはこれがどこで作られた大豆を原料にしているのかというところまでわからないのです。けれども本当は知る権利があります。
 さっきJICAの環境社会配慮ガイドラインというものが紹介されましたが、同じように消費者基本法というものがあります。日本の消費者の権利として、食べるもの、使うもの、商品を選ぶ権利があり、国や事業主が消費者政策を環境に配慮して、国際的な連携を確保して行う責務があると書かれています。このような法律があるわけですから、私たちは企業が何をどこから輸入して、それはどこでどのような状態で作られたものかということをもっともっと情報請求して知っていく必要があると感じました。特に農産物を輸入して、それを原料に作っていらっしゃる企業の関係者の方がもし今日この場にいらしたら、それは強く要望したいと思っています。

 そんな食と税金ということで、お財布と口というつながりで、市民のつながりでこの問題を取り上げてきましたが、今一番強く感じているのは、この問題をほとんどの人たちが知らないということです。今日ここにこれだけ大勢の方がいらして、私は驚いたのですが、先ほど話したチャリティーショップでもしお客さんに、「モザンビークで行われているプロサバンナ事業」と言って知っている人はほぼ99.9%いないと思います。残念なことにそうなのです。私たちの団体でもリーダー層の人たちには情報を渡していますから、かなりの人たちが知っていると思いますが、それを市民に伝えていくときには非常に優先順位が落ちてしまうという現状があります。ですが、そこをなんとか気を引き締めてクリアしていかなくてはいけないなという感想を、今日お話を伺って持ちました。
 それでどうしてもアフリカは遠い世界になってしまうのですが、今日このように直接お話を伺うことができたことは、私たちにとっても非常に大きな財産だと思っています。このことはぜひこれから団体の内部だけじゃなくて、ほかの市民にも発信していきたいと思います。消費者として1人1人の市民が今日この問題を知った人たちが、さっきの高橋さんの「お盆の上で会議をする」ではないですが、一部の人たちだけの話になってしまっては解決できないと思いますので、ぜひ今日参加した人たちには1人1人が自分たちなりの発信で広げていけたらと思いますし、そうしてほしい。そして、私たち自身もそういうふうに動いていきたいと思います。本当に市民の感想ですけれども、以上です。ありがとうございました。

(司会)
 ありがとうございました。ではもう一方、コメントを頂く法政大学教授の松本先生のほうからお願いいたします。

コメント:松本悟(法政大学教授)
 法政大学の松本と言います。どういう立場でコメントするかですが、80年代からODAの問題に関心をもって、東南アジアで活動してきて、先ほど出てきた現在のJICAの環境社会配慮ガイドラインを策定するプロセスなどに関わってきた者として少しコメントをしたいと思います。
「先祖帰り」というタイトルで高橋さんが先ほど話をされました。私もこの言葉は一つ、意味深長なところだと思います。しかし、「先祖帰り」というのはつまり80年代、90年代に批判されたODAに戻るという意味なのかなと思いましたが、「先祖帰り」ではない部分のところが非常に私は気になります。一見「先祖帰り」に思えて「先祖帰り」でない。
例えばWE21の方からお話がありましたが、私も大学で教授をしていて、この中にも教員の方々いらっしゃると思いますが、私は授業のときにいろいろなことを聞きます。「日本のODAが日本の人たちのために使われることにどう思いますか?」という質問には9割賛成です。つまり日本のODAを途上国で困っている人のために使うべきだと思うのですが、今の日本は、日本のお金が自分たちの利益になることも大事なのではないかと20歳前後の人たちが言っていることにも目を向けなければいけないと思います。
 先ほど高橋さんが「私たちがいったい誰を見ているのか」ということをおっしゃいましたが、こういう話があるのも事実で、これは少なくとも90年代に日本がODA世界一だと言われたころにはなかったことです。やはりODAというのは困っている人たちのために使いましょうよと、私たちが戦後発展できたのはこうしたもののおかげなのだから恩返しだという声が圧倒的だったのですが、今はそうではない。日本の税金なのだから日本人のために使ってどこがおかしいのですかと真っ向から言ってくる学生に出会うようになりました。逆の学生のほうが実は少ないです。やはりこういうことに私たちがどう向き合うのかということは、市民社会として欠かせない視点ではないかなと思います。
 二つめ。「先祖帰り」と少し違うという点について。例えば、ガルトウングで言えば、「文化的暴力」ということでしょうか。すなわちなにがいいことかという言説がある。例えば、政府はもちろん援助は生活をよくするためと言う、あるいはJICAや外務省は昔と比べれば対話をするという点です。これだけ批判を受けているプロサバンナ事業ですが、十何回協議会をしている。一見すると、18回も協議会をしているのだから、胸襟を開き、対話のテーブルを持っているという言説のみが、アリバイのように使われ、事業そのものはどんどん前に進んでいっている。
 「先祖」はそうではなかった。「先祖」はNGOはシャットアウトです。「なにが市民社会ですか」、「あなたたちは誰の代表者ですか」と言って門前払いだったわけです。ところがやっていることが違うわりには実際は同じで、「NGOさん、文句あるならどうぞ」、「問題あるならミーティングを開きましょう」、「モザンビークから来たのだったらぜひお会いしましょう」となる。政府がこういう対応をするようになったということが、逆に問題に出会ったときに対応を難しくさせるということではないかと思います。
 最後になりますが、「先祖」と違うところの三つめ。敵の姿が見えにくいということです。あえて敵という言葉を使わせていただきます。今日のお話を聞いて、皆さんモザンビークに詳しい方が多いのかもしれませんが、いったいJICAの何のプロジェクトが問題を起こしているのかがわかった人がどのくらいいらっしゃるか。かつてであれば、“インドのナルマダダムが10万人の少数部族を追いやる”などの明確なメッセージがあったわけです。ところが今、いったいJICAが支援した何という事業がどういう人たちにどういう影響を与えているのかという説明はしにくくなりました。問題を起こしていないというわけではなく、説明しにくくなった。それは敵の姿が見えにくいからだと思います。それはなぜかと言うと、直接影響を受ける部分にはJICAはダイレクトに関与していない。そこは民間がやっていたり、モザンビーク政府がやっている。一方、JICAはそれを側面からサポートする役に徹してお金なり技術協力は出している。そういう中で、このプロサバンナというお化けと戦っているわけです。このお化けとJICAの関係があまりにも間接的な見え方をするので、やはり闘いにくい。それがおそらく、なぜこれほどまでに議論を積み重ねているにもかかわらず、議論が全く噛み合わないかの原因の一つなのではないかと思います。
 従って、ぜひここに集まっていただいた方々には、「先祖」のように見えて「先祖」ではないこのお化けとどうやって闘っていくかについて改めて戦略を考えるということが必要だと思いますし、私の経験で役に立つことがあれば今後も何かできたらと思います。

(司会)
 どうもありがとうございました。次に参議院議員の石橋通宏先生から一言お願いいたします。ずっと現地を訪問・視察し、また様々な情報公開についても協力いただき、国会においても質問をしていただいております。よろしくお願いします。

石橋通宏議員(民進党参議院議員)
 どうも皆さん、こんにちは。参議院議員の石橋通宏と申します。今日の呼びかけ議員の一人として、こんなにもたくさんの皆さんに会場に詰め掛けていただき、今日この問題について一緒に共有をしていただいていることを本当に嬉しく思っております。
本当は今日冒頭から参加する予定が、急な会議が入ってしまいまして、この時間になってしまいました。今ご紹介いただきましたとおり、3年少し前にモザンビークを訪問し、プロサバンナ事業の問題に触れて、これはいけないだろう、このままではだめだという思いで、今日ここにお集りの多くの皆さんと共に3年半にわたり様々な取り組みをさせていただきました。なんとかこのプロサバンナが、真にモザンビークの国民の皆さん、農民の皆さんのためになる、本当にいい事業にしたいという思いでいろいろな取り組みをして参りました。
今日、現地からいらした皆さんからお話が多々あったと思いますが、残念ながらまだまだ課題山積です。なんとかこれからも今日いただいたご意見なども踏まえて、これが本当に国民の皆さんのため、農民の皆さんのためになるような事業として進んでいけるように私自身も頑張って取り組んでいきたいと思っております。大切なのは皆さんにぜひ知っていただいて、ぜひ関わっていただいて、いい形になるように声を上げていただきたいと思います。今後とも私たちも頑張ってまいりますので、応援を頂くことをお願いさせていただきます。今日本当に遠くモザンビークからお見え頂いた皆さんに感謝を申し上げて、一言連帯のご挨拶とさせていただきます。ありがとうございます。

(司会)
 ありがとうございました。ではこれから第2部これまで、発表、報告、問題提起ありました。これを受けて質疑応答に移りたいと思います。第1部と同じように質疑応答される方はお名前と所属、あと簡潔に質問項目を1つ述べていただきたいと思います。では質問したい方、手を上げてください。

【質疑応答】
米川正子(立教大学教員)
 貴重なお話ありがとうございました。渡辺さんのお話で、「市民社会対話メカニズム」のお話がありました。これから質問するお話は渡辺さんが話してもいいですし、西川先生や高橋さん、松本さんが答えてくださってもいいです。
現地のNGOを使って分断させている、弱体化させている戦略があるということでした。戦略と言っていいのかわかりませんが、それがモザンビーク以外のところですでに行われてきたかどうかをお聞きしたいです。
なぜかというと、これを聞いているとかなり軍事的やり方だというふうに思いました。紛争関係、紛争アクターの研究をしていますと、いろいろなところに、敵と思われているところに潜入して、分断して、弱体化していく、それで恐怖を植え付けるという戦略に出会います。今回全く同じやり方をJICAはしているのかなと思い至りました。そうすると、JICAはだんだん武装勢力になってきているのかな、と思ったので質問しています。
 あとは人権侵害について話されていましたが、Human ecurity、日本の外交政策の一つである人間の安全保障も全然守られていないと感じました。以上です。

田村さん(大学院生)
 ナンプーラ州の現状についての質問が1点ありますが、市民社会の分断が起きているということでした。ナンプーラ州の住民の間の親族間や集落の間でも分断というのは起きているのでしょうか。抗議に対する理解は住民の間でどれくらい得られているのでしょうか。例えばUNACに入っている人とUNACに入っていない人とでは全く違ってきているのでしょうか。
 あとアグロエコロジーに基づく新たな発展ということをおっしゃっていたのですが、今日お時間がないと思うのですが、もし機会があったら是非お聞きしたいので発表いただきたいです。よろしくお願いします。

小林さん(横浜国立大学)
 大変情報量の多い発表ありがとうございます。渡辺さんの発表への質問なのですが、人権侵害という言葉がありました。一方、松本さんのほうでお化けと闘っているので相手が見えにくいという話が非常に意味深だなと思いました。一方で、人権侵害といった場合、お化けには人権侵害はできないので、かなり具体的に行われているのだと思います。でもそうだとすると、そのときに誰が誰のどんな人権を侵害しているという事実があったのかと言うあたりについてもう少しお話しいていただきたいと思います。前半の部分で分断の話があったと思いますが、そのことを指しているのか、それともそれ以外の話なのかというあたりです。お願いします。

(司会)
 渡辺さんの発表を含む人権侵害についても質問がありました。まずやはり、人権侵害を受けてきた農民自身に話を聞いて、その補足として渡辺さんからもあればお話していただくのがいいかなと思います。ジュスティナさん、お願いします。

(ジュスティナさん)
 ありがとうございます。それではどういう人権侵害があったかということをお話したいと思います。第1回の公聴会のあと、私は政府関係者によるストーキング行為に遭いました。ナンプーラ州のレベルで起こったことです。私は公聴会でナンプーラ州農民連合の副代表としてナンプーラ州の農民のために、プロサバンナのこのあり方に対してNOということを言いに行きました。公聴会が終わったあと家に戻ったら、自分の最も身近な地域の行政官に呼ばれました。その行政ポスト長の部屋で、朝8時から14時まで詰問され続け、脅迫を受けました。モザンビークの市民、国民としてなにも自由に話してはいけなかったのでしょうか。農民たちはあまりにも権利がなくて文句を言うことすらできないのでしょうか。そのように行政との関係というものは悪くなっています。
 我々はそのような脅迫を受けているだけでなく、100%農民である私たちを何者でもないかのように扱います。まるで私たちがトイレに敷いてあるカーペットであるかのような扱いを受けています。これは人権侵害ではないのでしょうか。私は政府関係者たちに人間ではないかのように、そうやってトイレのカーペットのように踏みつけ続けられているのです。私について言うならばこのような感じです。もちろん、これは私だけに起こっていることではなく、ナンプーラ州の農民たちは、少しでも自分の意見を言うことによってコミュニティの中で、政府からの、政府と言うといろいろな誤解があると思いますが、与党がほとんど支配しているので与党関係者によっても、人権侵害や脅迫を受けています。それは自分だけではございません。ナンプーラ中で起きていることです。我々は「野党の人間だから」(政府を批判する)とまでレッテルばりを受けています。あるいは「反開発主義者」とのレッテルばりを受けます。
 ですから、この開発という言葉に対して、開発という言葉をどう理解するかということはなかなか難しいのですけれども、私たちが言いたいことは、あなたがやっている開発は「悲しみのための開発」である。しかし、私たちは「幸せのための発展」を紡いでいきたいと主張したいと思います。
 私たちは先ほどから何度も言っているように、発展そのものに対して反対なのではなく、今起きている開発モデルに対して反対をしているのです。その開発モデルとは何か? 私たちが、血が流れる同じ人間であるという前提に立っていない開発だということを申し上げたいのです。だからこそ、私たちは、ナカラ経済回廊開発が「平等な権利を持った人間のための開発モデルになっていない」ことに対して反対しています。
 最後に、JICA関係者によるこれまでのマニプレーション・介入によって、私たちがどのような気持ちを抱いているのかについて述べたいと思います。それは、私たちの肉と骨に刻み込まれるような傷となって私たちを痛めつけています。ありがとうございます。

(司会)
 私は、今年ケニアで開催されたTICADVI(アフリカ開発会議)にジュスティナさん、それから残りのお二人と一緒で参加して、色々とお話をうかがいました。
 その時ジュスティナさんは、石炭輸送のためのナカラ鉄道の高速化によって、収入が3分の1になったと話されていました。これまでは鉄道の駅で自分の農作物を売っていたのですが、電車が駅に止まらなくなったために、それが売れなくなった。また、かつては電車に乗って町に出て、農作物を売っていたが、それもできなくなった。そして、子供達は学校に行くのが非常に不便になって、危険な目に遭っている、とおっしゃっていました。彼女の生活、家族の生活が急に悪くなっているということを話してくれていました。
 ではコスタさんも一言お願いします。

(コスタ)
 もう一度ありがとうございます。
 分断ということについて質問がありましたのでそこにお答えしたいと思います。
 私たちが分断について述べるとき、されなければならない説明があります。それは、プロサバンナ事業が始まって以来、ほとんどすべてのモザンビーク中の市民社会が、一致団結して事業に反対を唱えてきたという事実があります。
 去年4月から9月まで(プロサバンナ事業のマスタープランの)公聴会があったのですが、その公聴会の後も、小農と市民社会の一部はプロサバンナ事業にNOと言い続けていました。しかしながら、JICAがMAJOL社と言う現地の会社と契約を結んで、このMAJOL社を介して、プロサバンナ事業に反対していた市民社会の一部に対して彼らが賛成するよう働きかけを行いました。プロサバンナ事業に同意するよう、働きかけがなされたのです。そのターゲットにされた幾つかの団体というものがありました。
 この一連のプロセスを経て、1月が来ました。ナンプーラ市で多くの団体が呼び集められて会議をしました。その時、JICAの契約したMAJOLという会社が、次の様に話しました。「市民社会はこの闘いに勝ったのだ」。しかし続けてこう強調しました。「だからこそプロサバンナ事業を前に進めなければいけないのだ」、といったのです。
 そのことに喜んだ団体がありました。ですから、このようなプロセス、つまり、JICAはお金を使って契約したMAJOL社を通じて、現地の市民社会を分断したのです。そして、一部の市民社会はそれに賛同してしまった。
 ですから、JICAによって「プロサバンナにYES」と言えという情報操作・介入が行われた結果、それでも反対し続ける農民・市民社会と賛成派市民社会というふうに分かれた状態にあります。そして、これはJICAによる私たち現地農民の権利への侵害だと考えています。

 2つ目の質問にあった、アグロエコロジーについて。モザンビークは気候変動で大変な状態にあります。雨が降ったり降らなかったり。降りすぎたりということが起こっています。そして幾つかの企業による大規模な開発によって、この気候変動の影響が悪い形で出ています。このような困難と現実に直面する中で、私たちの農民連合は有機農業の推進をしています。化学肥料や化学農薬を使わない形の農業を推進しています。
 しかし、JICAが持ってきたプランは、私たちが取り組んできた農業、そして推進したいと思っている農業を台無しにしてしまうものでした。JICAのプランは、私たちがこれまで積み重ね、そして変わりゆく現実に対応するために改善を繰り返してきた努力を踏みにじるものでした。ですので、反対を唱えているのです。
 ここへ来る前に兵庫県の丹波市に行ってまいりました。丹羽市の市島は実は「有機の里」と呼ばれており、有機農業の推進をしています。そこで見たのは、有機農家が素晴らしく高い生産性を持ち、環境に配慮しながら農業を進めている姿でした。そしてその努力を丹波市の行政が支えているという実態がありました。
 市の行政官が、このような取り組みを農民と一緒になって推進していこうとしていると聞いた時、なぜJICAは同じことができないのかと疑問に思いました。つまり、私たちの地域にやって来て、私たちのしていることを全面否定して、違う農業をやれということに疑問を感じました。なぜそうなるのか、本当に分かりません。
 私たちは、自分の暮らしのレベル、それからコミュニティ、郡、州レベルで、キャパシティ・ビルディング(能力向上)に取り組んできました。農民として、当事者として、他の農民に対してキャパビルをやってきただけではなく、国家の政策としても有機農業に基づく農業を推進していこうとしています。これは、国のレベルだけでなく、グローバルなレベルでもそうで、実際にこの推進活動に取り組んできました。
 日本でも、実際に丹波市の皆さんがそのような意識を持って農民と共に有機農業推進をやっていらっしゃり、日本にもそういう政策があると知りました。では、なぜJICAは、モザンビークで一緒になってそれを推進していくことができないのかとの疑問を持つようになりました。
 また、丹波市の市役所の方々が教えてくれたことなのですが、今、日本では、国や市のレベルで慣行農業から有機農業に転換するために相当の補助金を使っているそうです。そうやって、農民たちを支えていることを学びました。これはとてもいいことだと思います。
 ご質問にちゃんと答えたかわかりませんが、これが私の答えです。

(司会)
 では最後にクレメンテさんの方から一言お願いします。

(クレメンテ)
 分断されたのは市民社会だけではなくて、こうした動きを通して農民たちも分断されています。市民社会団体の中にもいろいろな団体があるわけですけれども、現場を持っていて実際に農民たちとつながっている団体もあるのです。今、具体的に「市民社会対話メカニズム」の中で行われていることは、農民にアクセスのある団体をまとめ、かなり積極的に「プロサバンナを受け入れよう」という働きかけを行っています。つまり、農民がこの事業を支持しているとの状況を作り出し、プロサバンナ事業が次の段階に進められるようにするために、市民社会組織の中でも農民へのアクセスを持っている団体への働きかけをしているといったような動きが見られます。

(司会)
 ありがとうございました。では、最後に渡辺さんからも一言。あと高橋さんもありますか。

(渡辺)
 先ほど前半で出た質問、Vale社と三井物産によるナカラ鉄道整備事業にODAが入っているのかという質問がありました。松本さんのおっしゃっていたお化けの話と似ているのですけれども、実態はこういうことになります。
 一つは、先ほどのモデルを思い出して欲しいのですが、まずナカラ港の改修工事に250億円もの借款が供与されています。その上で、貿易保険が企業に出され、この地域に進出しやすいような環境・構造が作られています。貿易保険の財源は国の金=税金です。
 また、2013年6月にTICADが行われましたが、そこでアフリカ諸国との投資協定の交渉が検討され、、日本の権益をリスペクトするといった協議が開始されています。こうした政府によるすべての取組が、企業側にとって進出のインセンティブになって、ナカラ経済回廊開発というものが行われています。
 なので、例え鉄道にODAが直接的に使われていないと言っても政府がそういったお金を投入して、要は官民連携、「投資のための援助」、そういったことを推進しているのです。
 このように、すごく見えづらい形で起きていますが、このような実態があります。今年、モザンビーク政府による債務隠しが見つかって、今、国が大変なことになっていますが、そういう中で日本は無償だからということでお金を供与し続けて橋梁の建設などを行っています。こういったこともインフラ整備になる、インフラが整えば企業が進出するインセンティブになります。そういった形でこの地域で我々の税金、ODAは使われていますし、そういう全体の構造の中に事業があります。

(高橋清貴 / 恵泉女学園大学)
 贄川さんのご質問応えたいと思います。
 僕が聞かれてすぐに思い出すのは、フィリピンで円借款事業をやった時に、港湾の建設に反対する住民がいて、非常に暴力的なやり方で、その住民を分断するかのように、フィリピンの軍隊を使って反対する住民を追い出したりという事例はあります。こういう事例というのはある種、大型開発に伴うすごく常套手段のような気がしています。日本でだって、開発の現場で新住民と古い住民とで分断するというのははよくあった話ですから。
 要はこのスタイルが何で今でも続いているのかということだと思うんですよね。確かに僕、タイトルが「先祖帰り」となっていて、自分がつけたタイトルじゃないのですけれど、でやってくださいって言われて。あえて「」をつけたのですけど、でも、よかったなと思うのは松本さんから非常に良いコメントを出していただいた。
 結果的な話ですが。本当は対話のあり方だとか対話の必要性について言われつつも、でもそのやり方は昔からのクラシックなやり方で続けているという。その、ある種分裂病的じゃないですが、そういう状態にJICAがおかれていることそのものがどうなんだろうって感じがしています。
 もう一つは、非常に起こっていることが「間接的」というか直接手を下さないことによって、日本の援助は自分たちの責任、とりわけ法的な責任が問われないということに逃げている部分がある。ただ、事態そのものを招いたこと、それからそれを助長していること、それと全体としてこういう状況をもたらしていることの責任はある。しかし、直接したわけではないからと自分たちの責任を、「まあ大丈夫じゃないか」としてすませてしまう。その結果、いろんな問題を引き受けているのが現地の住民たち。つまり、このような関係の中で、人権侵害を非常に受ける状況が生まれている。

(津山)
 ありがとうございました。先ほどコメントをしたい、という方がいらしたのですが、私達は今回の院内集会をするために非常に長い時間をかけて準備してきました。今日たくさんコメントされたい方がいらっしゃると思います。でも、最初にお伝えしたようにこの場はモザンビークから来てくれて危険の中でも勇気を持って私たちに伝えようとしてくれた農民たちの声を聞くというのが一番だと思います。すでに時間にもなっていますので、申し訳ありませんが会場からのコメントはなしということにしたいと思います。
 私は今日三人、または他の発表者の人の意見を聞いていて、私がモザンビーク、彼らが住むところを訪問した時のことを思い出しました。一番衝撃的だったのは、ずっと車で行って山の中を入って行った後に、突然何もない更地がありました。それは5,000ヘクタールの更地でした。そこは数ヶ月前までは500家族以上の農民が住み、その農民たちの畑と家と家事と、水場とお墓と、全部があったところです。その人たちは何の代替地もなくそこから追い出されていました。
 そういったところを地道にまわっているのがコスタさんやジュスティナさんです。そこでは、先ほど発表の中にもあった日本への食料安全保障のための大豆というものが言われてから多国籍企業がたくさん入るようになって、多国籍企業によって大規模な農場が作られています。ジュスティナさんも、非常に大きな土地なので空中散布される農薬で子供達の健康が害されているんだ、水場もすごく遠くなって人によったら3時間ぐらい歩かないと水場につかなくなった人もいるんだと言っていました。だから本当に農民たちがいろいろな形で犠牲になっているということを、私たちはもっともっと彼らから聞かないといけないし、それに対して一緒にできることを今後も続けていきたいと考えています。
 今日は長時間にわたり皆さんありがとうございました。また報告があれば、今後の意見交換会のこともそれぞれの団体のホームページだとかFacebookでもお知らせしていきます。ぜひ、一人でも多くの人にこのモザンビークからの声を伝えていく、そして一緒に行動をしていくということを続けていきたいと思います。
 モザンビークでは長年、独立闘争から様々な困難を乗り越えてきて、いつも彼らが行ってきた言葉が A LUTA CONTINUA という言葉です。「闘いは続く」という意味です。そして私たちは決してあきらめないんだ、そういう風に言いながら、歌い、連帯してきました。
 最後に、せっかく農民の代表のコスタさんとジュスティナさんが来てくれていますので、彼らに A LUTA CONTINUA と、いつもモザンビークで彼らが集まった時にやるようにしていって、できれば賛同される方はそれに応えていただければと思います。

(コスタ)
A LUTA CONTINUA!

(参加者)
A LUTA CONTINUA!




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MozambiqueKaihatsu

Author:MozambiqueKaihatsu
「モザンビーク開発を考える市民の会」の公式サイトへようこそ!本サイトでは、モザンビークの草の根の人びとの側に立った現地・日本・世界の情報共有を行っています。特に、現地住民に他大な影響を及ぼす日本のODA農業開発事業「プロサバンナ」や投資「鉱物資源開発」に注目しつつ、モデルとされるブラジル・セラード開発についての議論も紹介。国際的な食・農・土地を巡る動きも追っています。

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