Entries

【解説】JICA理事長宛「公開書簡」が出された背景と概要

2017年2月17日に、モザンビーク市民社会組織よりJICA理事長宛に「公開書簡〜プロサバンナにおけるJICAの活動に関する抗議文」が出されました。
http://mozambiquekaihatsu.blog.fc2.com/blog-entry-234.html

これを受けて、これに至った背景について概要を説明してほしいという依頼があったため、本ブログに整理する形で掲載いたします。

詳細は、以上の仮訳を見て頂くと当時に、以下の日本のNGOのサイトにある過去の声明などをご参照下さい。
http://www.ngo-jvc.net/jp/projects/advocacy/prosavana-jbm.html
http://www.ajf.gr.jp/lang_ja/ProSAVANA/
また、市民によって運営されるフェースブック(モザンビーク小農応援団)にも、一般向けの詳しい解説が書かれていますので、そちらをご参照下さい。
https://www.facebook.com/%E3%83%A2%E3%82%B6%E3%83%B3%E3%83%93%E3%83%BC%E3%82%AF%E5%B0%8F%E8%BE%B2%E5%BF%9C%E6%8F%B4%E5%9B%A3-1060343997409346/?hc_ref=PAGES_TIMELINE

【今回の公開書簡とこれまでの声明の違い】
1) モザンビーク市民社会組織、「プロサバンナにノー キャンペーン」単独での起草・提出であること。
2)3カ国政府に対してではなく、JICA理事長及びJICA組織全体に対するもの。
3)JICAの環境社会配慮ガイドライン、コンプライアンスポリシーを学び、その上で違反が明確になったと考えて書かれたもの。(特に、技術協力事業ProSAVANA-PD(マスタープラン策定支援)の資金によって立ち上げられた4つのサブプロジェクトによるもの。中には、現地NGOへの2200万円の契約がある)
4)「キャンペーン」のモザンビーク憲法、国連憲章、国際人権規約における「キャンペーン」の立ち位置を示しつつ、JICAがこれらにどう違反しているか示した。
<=社会介入は、JICAのガイドライン・法令・国際合意でも禁じられている。

【「公開書簡」の主要ポイント】
1)情報開示請求やリークによって、モザンビーク市民社会への介入・分断工作に、JICAの資金が使われてきたことが明確になった。
2)今、さらなる分断が、今度は地域社会の中で「コミュニティ・コンサルテーション」という名称の宣伝活動によって、本年2月27日より、北部3州の205カ所で実施されようとしている。
3)この「コンサルテーション」は、3カ国の市民社会が11月、日本のNGOらが12月に異議を唱え、外務省局長が「凍結」を日本のNGOらに約束したものであるが、JICAは依然として強行しようとしている。(JICAによる現地NGOへの契約金で実施)
4)これを強行すると、地域社会の中で事業に反対している農民たちの身に危険が及ぶ可能性が高い。
5)また、前回「郡公聴会」に続き、地域社会におけるプロサバンナをめぐる分断状況を作り出す。
<=長年の紛争後に作られた現在の憲法が謳う「社会調和」「多元主義」違反

【JICAは何をしたのか?】
1)特に、問題は、JICAだけが資金を出す「4つのサブ・プロジェクト」で、すべて現地企業・団体とのコンサルタント契約を行っている。
a. コミュニケ−ション戦略定義プロジェクト
b. コミュニケーション戦略実行プロジェクト
c. ステークホルダー(市民社会)関与プロジェクト
d. マスタープラン見直しプロジェクト
2)この4つの内最初の3つはその存在自体が、社会から隠され続けてきた。
3)リークや情報開示文書によって、4つのプロジェクトの存在と具体的な中身が明らかになり、JICAが明確に市民社会への介入意図をもってこれらの事業を立ち上げ、指導し、資金を提供してきたことが分かった。
4)特に深刻なのが、プロサバンナ事業に一致団結して反対していたモザンビーク、特にナンプーラの市民社会に介入し、「賛成派」を作り出し、反対派を孤立化する試みが、NGO出身の現地契約コンサルタントを使って行われたこと。
(注:アクションエイド・モザンビークとWWF・モザンビークの元ディレクター)
5)その結果として結成されたのが、政府と市民社会の「唯一の対話のメカニズム」(MCSC)であった。
6)リーク文書により、このMCSCとそのコーディネイターのアントニオ・ムトゥア氏が、ブラジルや首都、州内での宣伝活動に従事させ(JICAからの資金提供あり)、「プロサバンナにノーキャンペーン」に参加する団体のドナーや農民組織のコミュニティなどで、対抗キャンペーンを繰り広げてきたことが分かった。
7)以上についても、過去に声明などで抗議を行ったが、JICAは無視したばかりか、上記ムトゥア氏の団体と、2200万円のコンサルタント契約を結んだ。その後、JICAの契約者(署名者)がムトゥア氏自身であることが発覚した。
8)JICAのコンサルタント契約は、「マスタープランの見直し」を目的とするもので、公正さが不可欠とされる契約・事業であり、JICAは一般競争入札を強調する。
9) しかし、JICAが前のコンサルタント契約で作り出した「賛成派NGO」の主導者を、JICAの契約相手方として巨額の資金を投入したのは、明らかにJICAのガイドラインだけでなく、コンプライアンスにも違反する行為である。
10)さらに、JICAと日本大使館は、地元新聞のインタビューをアレンジし、ムトゥア氏とJICAとの契約事実を隠す形で、「市民社会の代表」として登場させ、「賛成派の擁護」と「キャンペーンの誹謗中傷」を行わせた。
11) この地元紙とのインタビュー時に、ムトゥア氏は、JICAがコンサルタント契約費として支払う2200万円(内60%以上が「報酬」)を、「地元市民社会(MCSC)を支援するための資金」として虚偽の説明を行った際に、訂正も否定もせず、虚偽の情報をモザンビーク社会に拡散させた。
12)つまり、JICA自らが作り出した市民社会内部の分断を、JICAがコンサルタントと地元メディアを使って宣伝・促進した。また、この記事は、「日本大使館の組織化した旅行の一環で執筆された」との一文が付け加えられ、その関与が後日暴露されている。

【結論】
以上から、JICAのプロサバンナで行ってきた行為(特に、ProsAVANA-PDの資金を用いたもの)は、JICA自らのガイドライン、コンプライアンス、国連憲章、国際人権規約、モザンビーク憲法に明確に違反している。我々は権利を侵害された上に、社会に分断が持ち込まれた。「Do No Harm」の原則に反している。

【要求】
A) JICAに対して、プロサバンナ事業への即時中止。
B) 一連の問題についての独立審査会の立ち上げによる検証と被害者救済。
C) 「コミュニティコンサルテーション」の直ちなるにキャンセル。
D) 現地NGOに対する契約の破棄と情報開示。

【今迄の前提】
これまでプロサバンナに反対してきたのは、そのモデルによる農薬多用・土地収奪の危険性の高さ・異議を唱える人びとへの人権侵害・不透明性・秘密主義によってであるが、異議を唱える人びとや団体へのローカルレベルからナショナルレベルでの弾圧が強まったことを受けて、2014年6月に「プロサバンナにノー キャンペーン」がUNAC、3州の農民連合と市民社会組織によって結成された。

結成後、モザンビーク市民社会組織は、あらゆる手法で問題提起してきたが、弾圧が強まるばかりか、市民社会の介入がどんどん強まっていった。この間、政府やJICAの関与を裏づける証拠が文書の形で出るようになってくる一方、市民社会の分断の動きが強められていった。

これを受けて、3カ国市民社会で、3カ国政府に対して繰り返し抗議・要請声明を出してきた。しかし、3カ国政府・JICAは、これらに真摯に応えるどころか、市民社会を何とか黙らせようと、介入が強化されていった。その介入の手法は、現地市民社会関係者(元を含む)をJICAがコンサルタント契約を行い、自らの手足として使う形で実施された。

その結果、ついにモザンビーク市民社会内部に深刻な亀裂が生み出された。

特に深刻な事態に陥っているのが、事業対象3州の中で最大の対象郡(19の内10)を抱えるナンプーラ州。この州では最大の小農運動(UNAC加盟の州農民連合)が現在までプロサバンナに反対している。しかし、この反対を切り崩すために、2015年より繰り返しの介入が行われてきた。

このことを訴えるために、同州最大の小農連合から農民代表2名が11月に来日したが、JICAはこれら代表の声に対抗させるために、モザンビークから農業省元副大臣(現プロサバンナ事業担当)と事務次官を急遽招聘した。

スポンサーサイト

Appendix

プロフィール

MozambiqueKaihatsu

Author:MozambiqueKaihatsu
「モザンビーク開発を考える市民の会」の公式サイトへようこそ!本サイトでは、モザンビークの草の根の人びとの側に立った現地・日本・世界の情報共有を行っています。特に、現地住民に他大な影響を及ぼす日本のODA農業開発事業「プロサバンナ」や投資「鉱物資源開発」に注目しつつ、モデルとされるブラジル・セラード開発についての議論も紹介。国際的な食・農・土地を巡る動きも追っています。

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

カテゴリ

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR