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【報告】2014年度活動報告「モザンビーク開発を考える市民の会」

2014年度活動報告
モザンビーク開発を考える市民の会
2015年9月25日

*以下のページに、活動継続のためのご協力のお願いを掲載しております。遠く離れたモザンビークではありますが、そこに暮らす小規模農民の皆さまの声を届け、その日々の努力や尊厳を応援するために私たちの税金・ODAが使われるように、どうぞ引き続きのご理解とご協力が頂けますと幸いです。
http://mozambiquekaihatsu.blog.fc2.com/blog-entry-181.html


1. 活動の目的
(1) 当会結成の背景

 アフリカ南東部に位置するモザンビークでは、他のアフリカ諸国と同様、資源開発・農業・林業分野に巨額の外資や大規模開発計画が流入し、数字上では経済成長が見られるものの、農村部では土地の収奪や環境悪化などにより人びと(特に小規模農民)は深刻な課題に直面している。同国では、貧富の格差が拡大する中、社会不安が増し、政府与党は民衆の不満を抑えようと権威主義化と軍事化を推し進め、民主的統治が後退する一方、2013年以来、農村部で散発的な武力衝突が続いてきた。なお、モザンビークは、1977年から92年まで、100万人が亡くなる激しい武力紛争を経験している。
 
 当会は、国民の圧倒的多数を占める小農が主体となる公平な発展こそが、モザンビーク社会の持続可能な平和と発展のために不可欠と考え、アフリカやモザンビークに長年関わってきた日本の研究者・NGO関係者らによって、2012年12月に設立された。以来、現地の人びとと共に、市民の立場から、モザンビークの開発を考え、調査や提言・発信などの活動を行ってきた。

(2) 活動の背景
 日本は、過去5年、モザンビークを投資と援助の重点国として位置づけ、2014年1月には安倍晋三首相が同国を訪問している。訪問に際して安倍首相は、2009年以来同国に対して行ってきた開発援助(ODA)を継続すること、新たに巨額の援助(5年間で700億円)を供与すること、そして日本からの投資を加速化することを表明した 。この結果、日本はトップドナーとして、同国の開発と社会に直接的かつ多大な影響を及ぼし始めている。

 このように、現在モザンビーク開発への関与を強める日本であるが、在外公館が置かれたのは2001年と遅く、援助の経験も極めて乏しかった。日本にとって最初の大規模援助事業となったのが、2009年に調印された「日本・ブラジル・モザンビーク三角協力による熱帯サバンナ農業開始プログラム」(以下、プロサバンナ事業)である。同事業は、モザンビーク北部3州(ナンプーラ、ザンベジア、二アサ)の19郡・1400万ヘクタール(日本の全農地面積の3倍)を対象とする農業開発ODAであり、360万人の農業生産者が裨益するとされる。

 しかし、同事業に対しては、2012年10月、同国最大の農民組織UNAC(全国農民連合。10万を超える小規模農民と全国の2,400農民組織が加盟)が抗議声明を出し、2013年5月にはモザンビーク23組織による公開書簡「プロサバンナ事業の緊急停止要請」が3か国首脳に渡された 。
 
 当会を含む日本のNGOや研究者らは、(1)UNACや市民社会の代表を日本に招へいしてその声を日本の政策決定者や社会に届ける一方、(2)外務省・JICAとの定期的な意見交換会を12度にわたって積み重ね、(3)2013年8月に現地調査を実施した。これらの結果、次の七点が明らかになった。
 ①海外投資による土地収奪の頻発
 ②土地収奪による農民の生活の悪化、地域コミュニティ崩壊の危機
 ③抵抗者への脅しや雇用問題を含む人権侵害
 ④現地小農による多様な農作物生産の創意工夫
 ⑤大規模開発への懐疑
 ⑥プロサバンナ事業に関する対象地農民・儒民の情報の欠落と不十分な関与
 ⑦プロサバンナ事業のパイロット事業での契約小農の債務

 以上を踏まえ、日本の市民社会は、外務省・JICAとの意見交換会で現地の状況や懸念を伝える一方、声明や報告書の形で社会に広く発信し、理解を深めようと試みてきた。その結果、プロサバンナ事業における農民組織・市民社会との対話の重要性は認識されつつある。

 しかし、投資関係者と政府関係者による批判的住民への圧力や抑圧、和平・政治情勢の悪化と2014年10月末に予定されていた大統領/国政選挙をめぐる政治対立の激化が影を落とし、助成申請時点において、現地では開かれた対話は困難に陥った。なお、2014年2月のUNACの声明にある通り、「大規模開発や投資による現地小農の苦境、社会不安の増大、武力衝突、さらなる小農の苦境」という悪循環が、日々事態を悪化させている 。

(3) 活動の目的
 以上から、当会として、現地住民・農民が主体として認識され、彼女ら彼らの声を反映した開発こそが公正なる社会の発展と持続的な平和へとつながるとの考えに至った。そして、この実現には、現地の市民社会・農民組織自身による開発計画への主体的な関与が不可欠であり、具体的には現状把握調査とそれに基づく提言、政策反映のための働きかけが重要との結論を得た。なお、これらの課題は現地の農民・市民社会組織によってすでに認識され、2013年10月の「第2回 土地とタネに関する小農国際会議」で強調されている 。これらの点を踏まえ、共同調査を通じた現地農民組織・市民社会のエンパワメントを目的として、本活動を提案した。

2. 活動の内容と方法
 本活動は、次の三点の活動を設定し、それぞれ次の方法で実施した。
 (1) 共同調査(モザンビーク北部)
 (2) 成果作成・発信(モザンビーク、日本、世界)
 (3) 政策実現の働きかけ(モザンビーク、日本、ブラジル)


共同調査の内容と手法
【調査実施者】現地農民組織から 3名(男性農民・女性農民)、現地市民社会組織から1名、日本から 1 名の調査者
【調査対象地】 プロサバンナ事業対象地 州(ナンプーラ州)
【調査手法】
➢ 現地農民組織および市民社会組織と共同で実施
➢ 共同調査を通じたエンパワメント支援
 農村部での調査(地方政府、農民組織、農村住民)
① 手法:
1) 計測・記録、資料収集
2) 聞き取り調査
3) 参与型観察
② 調査事項:
イ) 土地収奪現場の一年後の状況並びに新たな現場の現状把握(住民の生産、生活、地 域社会、環境への影響など)
ロ) プロサバンナ関連事業の進捗状況(一年後の状況、新たな関連事業の実施状況)
ハ) 土地収奪が起きていない地域の小農の生産状況、生活における課題、地域コミュニティの成り立ち
ニ) 現行土地法の慣習的運用(土地登記の有無など)によるメリット、デメリット
ホ) 開発により社会不安が起きている地域での現状把握
 都市部調査(政府、投資、援助関係者、農民組織、市民社会組織)
① 手法:聞き取り調査
② 調査事項:
イ) 地域の開発・投資計画とその影響に関する現状認識
ロ) 小農の抱える課題の認識
ハ) 農業政策、開発計画、和平状況、援助(プロサバンナを含む)に関する認識

*配慮事項: 調査対象地が母系社会であり、小農の圧倒的多数が女性という点を踏まえた女性・ジェンダー を重視したアプローチの採択が前提とされ、実際の現地調査には、必ず地域の女性農民代表も同行した。

(3) 成果作成・発信の手法
次の活動を、共同調査を行った現地市民社会組織と農民組織とともに実施した。
 ①現地調査結果を踏まえた報告書の作成(英語、ポルトガル語、日本語)
 ②調査報告に基づく提言の作成(英語、ポルトガル語、日本語)
 ③以上の日本・ブラジル・モザンビークの市民社会・政府関係者らへの提供
 ④国内外での幅広い発信
 ⑤報告会の開催(日本)

(4) 政策実現の働きかけの手法
 以上の現地調査、成果作成(報告書・提言)と発信を踏まえ、提言内容を実現するために、モザンビーク・日本・ブラジルで、政策実現のための働きかけを次の要領で行った。
 ①モザンビーク・ブラジルでの対話(特に上述「小農」国際会議)を通じた提言活動
 ②日本での対話(意見交換会、報告会)を通じた提言活動

3. 活動の実施経過
 上述三点の活動は、以下の要領で実施された。

(1) 現地調査
【調査対象地】北部ナンプーラ州、首都(マプート市)
【調査日程】2014年8月16日から8月31日

(2) 成果作成・共有・発表
 以下の三点の報告書が作成され、各市民社会内での政策提言作成に活用されたうえで、統一の提言内容がまとめられ、それぞれの政策提言活動に役立てられた。

①英語での共同報告書(2014年9月30日完成)
=>モザンビーク、日本、国際NGO間での共有
②日本語での他NGOとの共同報告書・提言(2014年10月28日完成)
  「プロサバンナ事業考察概要と変遷、そしてNGOからの提言」
=>日本NGO内での共有
=>現地調査報告会(2014年10月29日参議院議員会館)での発表・配布
=>インターネット上での公開
=>英語要約版のモザンビーク、ブラジル、国際NGO、研究者らとの共有と公開
③ポルトガル語での農民組織の報告書(2014年12月)
=>農民組織内、対象3州の市民社会組織内での共有
=>現地調査機関・学術関係者との共有
=>国際NGOとの共有

以上に基づいた声明・提言・記事:
【モザンビーク農民組織・国際NGO】
2015年2月14日「ナカラ回廊の土地収奪ー植民地プランテーションとの闘いの新時代」

【モザンビーク市民社会】
・2014年10月6日 「小農たちは、大統領選挙の候補者らが、小農による農業を周辺化すると批判」
・2014年10月24日現地新聞Verdade紙の記事「リオマ郡で何百人もの農民ら土地を追われる」
・2014年12月3日「ナンプーラの農民アソシエーションは、プロサバンナのモデル2に怒りを示す」

【日本市民社会】
2014年10月29日「提言:プロサバンナ事業再考へ向けて」(報告書16頁)


(3) 政策実現の働きかけ

 現地調査に基づく上述の統一の提言内容と三点の成果に基づき、日本・モザンビークの共同研究参加者らは、それぞれの国で、政策実現のための働きかけを行った。

①日本の政策・事業担当者との対話(意見交換会、報告会)を通じた提言活動
【JICA/外務省】
2014年10月14日: JICA・外務省担当者との意見交換(JICA本部(東京))
2014年11月17、18日:駐モザンビーク日本大使、JICAモザンビーク事務所
2014年12月2日:NGO・外務省定期協議会・ODA政策協議会(於:外務省)
2015年2月6日:第10回ProSAVANA事業に関する意見交換会(於:外務省)
2015年4月28日:第11回ProSAVANA事業に関する意見交換会(於:外務省)
2015年7月24日:第12回ProSAVANA事業に関する意見交換会(於:外務省)

【国会議員、開発コンサルタント、日本企業、研究者、NGO、メディア】
2014年10月29日 現地調査報告会(於:参議院議員会館)
「日本のODAによるモザンビークの農業開発事業「プロサバンナ」に関する現地調査報告と提言 ~合意から5年、現地で何が起きているのか?~」

②モザンビークでの対話(特に上述「小農」国際会議)を通じた提言活動
【モザンビーク政府(農業省)/研究者(モザンビーク、ブラジル、国際)/市民社会/メディア】
 2014年10月15-16日:第3回「土地とタネに関する小農国際会議」(マプート)
*モザンビーク政府、他援助機関、国内外の研究者、国内外のメディア、市民社会関係者、農民等250名が参加。JICAは現地スタッフ派遣。

4. 活動の成果   
(1) 直接的な成果

 本活動の直接的な成果としては、以下の点があげられる。

①共同調査の結果:明らかになった点
 詳細は、既に公開されている上述「プロサバンナ事業考察概要と変遷、そしてNGOからの提言」に譲るが、調査の結果明らかになった点としては以下が列挙できる。
•ナカラ回廊沿いで加速化する農業投資(特に大豆生産)による土地収奪の具体的実態(地元小農、特に女性農民に及ぼしている深刻な影響)
•プロサバンナの一事業(DIF)によって融資を受けた地元企業が地元小農の土地収奪を引き起こしている具体的実態
•プロサバンナの一事業(PEM)が大統領・与党支持母体あるいはUNAC加盟組織をターゲットとして実施されている現実
•現行土地法の慣習的運用のメリットとデメリットに関する農民、農民組織、市民社会組織、他援助機関の考え方の多様性
•小農組織/運動の土地収奪・農業において地域社会で果たす重要な役割(女性の積極的な関与を含む)
•和平・民主主義の現状に関する多様な層の懸念(政府関係者・野党関係者を含む)

②共同調査、報告書・提言作成を通じた成果:エンパワメント
 本共同調査は、現地の農民・市民社会組織の調査・提言能力向上を念頭に実施されており、その成果物となる調査報告は、現地の農民・市民社会組織が主体的にまとめ、関係農民組織内(200農民組織)や市民社会内(200組織)で共有された後に、各種の提言・記事・報告書がモザンビーク内外に向けて発表されている。その一覧は、上述「3. (2)」を参照されたい。
 
 これらの成果は、調査・記録によって裏付けがなされた考察に基づく提言に結実しており、モザンビークの農民組織や市民社会組織のキャパシティ向上に大きく貢献する結果となった。また、基礎データの市民社会間での共有により、国際NGOを通じて、世界に実態に関する認識を広める一助となった。
 
③成果の発信、政策的働きかけ
 いずれの国においても、調査結果に基づく提言は、政策立案・決定・実施に重要な役割を果たす政府・援助機関・国会議員等に対し、広く提供されるとともに、対話の素材として活用された。
 
 まず、2014年10月15-16日には、モザンビークの首都マプート市で、UNAC主催の「第3回土地とタネに関する小農国際会議」が開催され、共同調査を行ったUPC-Nがナンプーラ州からこれに参加し、調査結果に基づく発表を行い、現地市民社会組織と共にモザンビーク農業省関係者らと活発に議論を交わした。同会議には、モザンビーク政府や市民社会、モザンビーク・ブラジル・南部アフリカの農民代表の他に、国内外の研究者や援助機関、メディアなどが参加し、モザンビーク北部で悪化しつつある農業投資による土地収奪の問題やプロサバンナ事業に対する懸念が共有され、対応が議論された。
 
 2014年10月29日には、日本でも成果還元のための現地調査報告会が、3団体の主催により、参議院議員会館での4党6名の議員の呼びかけによって開催され、国会議員、政府・JICA関係者、開発コンサルタント、モザンビーク進出企業関係者、NGO関係者、学術関係者、メディア関係者等、100名を超える多様な層の参加を得た。同報告会の後半部分では、現地調査に基づく提言が読み上げられ、JICA関係者を含む出席者らとの活発な議論が繰り広げられた 。なお、この模様は独立メディア(IWJ)の協力を得て、全世界に同時中継されており、後日記事が配信されている 。

④成果まとめ
 以上の具体的な活動成果の結果、同事業の方向転換と改善の必然性が日本政府並びにJICA、そしてモザンビーク政府やブラジル政府によって理解されつつある。その結果として、2015年3月末に発表された「ナカラ回廊農業開発マスタープラン・ドラフトゼロ」では、「家族農業の重視」「小農支援」「農民主権の尊重」「土地収奪回避」という考えと文言が取り入れられた。これは最大の成果ともいえる。

 しかし、実態としては、土地収奪はますます加速化しており、プロサバンナ事業によって起きる問題も深刻化している。例えば、同事業に批判的な農民や市民に対する人権侵害が頻発するようになっている一方、既に進められている各種プロジェクトでの小農の主権を無視した手法は継続し、中には小農運動の分断を図ったものも生じている。

(2) 中長期的な成果
 2014年8月に実施された共同調査から約1年が経過した。以上の直接的な成果は、その後次のような中長期的な成果を生み出しつつある。これらを列挙する。

【連携・キャパシティ面】
①日本、モザンビーク農民組織・市民社会組織との連携の強化
②現地農民組織や市民社会組織の現地調査、報告作成、政策提言に関するキャパシティの向上
③草の根レベルから国家、国際レベルに繋がったアドボカシー能力の向上

【認識面】
④モザンビーク北部農民の自信と尊厳
⑤当事者・主権者としての農民運動の重要性の再認識
⑥日本、モザンビーク、世界での以上に関する理解の促進

【政策面】
①小農の土地収奪への国際的な懸念と関心の増加によるモザンビーク政府の対応の変化(2015年1月に発足したニュッシ政権が、「農業省」の代わりに「農業・食料安全保障省」を設置するとともに、「土地省」を創設)
②2015年3月31日に、プロサバンナ事業の一環として発表された「ナカラ回廊農村開発マスタープラン」で、「家族経営農業の重視と主流化」「土地収奪の回避」「農民主権」が主張されるようになる。

5. 今後の課題 
 主権者であり、農村開発の当事者である地域の小農の日々の奮闘、そしてそれらを支える現地の市民社会の努力、それを応援する日本とブラジルの市民社会の継続的関与によって、日本・モザンビーク・ブラジルの3カ国における政策には変化の兆しが一部に見られるようになってきた。

 しかし、この「変化の兆し」は文言上のものに留まっており、上述の通り実態が伴わない現実が継続している。また、農業投資による土地収奪をめぐる全体の潮流を変えるまでには至っていない。2008年の食料価格高騰以来、土地生産性と生産効率の最大化が重視され、民間投資の導入が不可欠なものとして喧伝される傾向は継続している。その文脈の中では、「小農による伝統に根ざした農業形態の低い生産性」が「農業開発の阻害要因の主犯」として標的になり、依然として「民間企業による大規模農業開発」と並び「契約栽培を通じた小農生産の近代化」が「唯一の処方箋」として推進されている。
 
 前者は土地収奪が可視化されることで国際的な批判の的となってきた。そのため、現在は後者に力点が置かれるようになりつつある。これは、プロサバンナ事業の変遷、そして上述「マスタープラン」でも顕著である。しかし、モザンビーク政府の農業政策においては、両者は依然として両立しうるものとされており、その結果として民間投資導入の推進はますます顕著になっている。これは単に農業政策上の考え方に由来するものではなく、ガバナンスの問題に直結している。

 これについては、本活動で調査したAgroMoz社の事例があげられる。同社は、地域の小農らの土地を収奪する形で大豆の大規模生産を行っているが、ブラジル企業の他、プロサバンナ事業の推進者の一人であるゲブーザ前大統領の投資会社が関与している。モザンビークに限らず、土地収奪の問題を考える際には、グローバルな潮流、援助の動向だけでなく、国内のガバナンスや政治状況を検討することが不可欠であることは広く認知されてきた。モザンビーク北部において、小農を犠牲にする形での農業開発計画が進められる背景には、深刻なガバナンス状況の悪化が指摘できる。国民の圧倒的多数(8割を超える)が小規模農民であること、そしてその過半数以上が女性であることを鑑みると、モザンビークで生じる土地収奪の問題や小農への抑圧の問題については、単なる農業開発の問題としてではなく、平和と民主主義、そして人権の問題として認識されなければならないことが分かる。

 モザンビークに日本の官民が深く関わるようになった2009年以来、同国の民主化・人権・和平の状況は坂道を転げ落ちるように悪くなっている。平和の主体として、コミュニティから各州、全国、そして国際社会でも奮闘してきた小農運動であるが、その権利はますます切り崩され、それに抵抗すると弾圧される状態が生み出されている。市民社会をめぐる政府与党の対応も同様である。これについて迫害を受けた農民からの訴えに直面してなお、日本政府・JICAは、これを認識することすら放棄している状態にある 。それでも、今後も対話を継続していくことで、これについても改善がなされると考える。何より、モザンビークでは、小農をはじめとする人びとが日々勇気を振り絞って一歩ずつ歩んでいる。その歩みを、日本の私たちとして、まずは知り、伴走しながら、息長く応援していくことが何より重要であろう。

 モザンビークの小農とともに歩んでいくことは、結局のところ、日本の私たちが直面する食・農の課題、そして私たち自身の和平とガバナンス・民主主義の問題を考えることに他ならない。


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Author:MozambiqueKaihatsu
「モザンビーク開発を考える市民の会」の公式サイトへようこそ!本サイトでは、モザンビークの草の根の人びとの側に立った現地・日本・世界の情報共有を行っています。特に、現地住民に他大な影響を及ぼす日本のODA農業開発事業「プロサバンナ」や投資「鉱物資源開発」に注目しつつ、モデルとされるブラジル・セラード開発についての議論も紹介。国際的な食・農・土地を巡る動きも追っています。

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