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【記録】国際開発学会での発表(農業開発援助と農民主権:ブラジル・モザンビーク)

安倍首相のブラジル訪問を受けて、ブラジル・セラード開発の功罪の議論が活発化することを期待し、以下去年の国際開発学会(於:宇都宮大学)の企画セッションの報告で、関連する部分(セラード農業開発:PRODECER並びにプロサバンナ)について貼り付けています。

【新着情報】
第14回春季大会の報告書を宇都宮大学図書館のリポジトリに全セッションの議事録と資料が掲載されました。

http://uuair.lib.utsunomiya-u.ac.jp/dspace/handle/10241/9253

セラード開発については以下の記事もご覧ください。
【再掲】セラード開発のもたらした悪影響に関する発表・報告書
http://mozambiquekaihatsu.blog.fc2.com/blog-entry-112.html

*このセッションの報告書は近日中に宇都宮大学のサイトに掲載予定。

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原発事故から2年、第5回アフリカ開発会議(TICAD V)年に問い直す開発と発展
「アフリカにおける経済成長と内発的発展~グローバル農業投資と農民主権」


【日時】2013年6月8日(土)12:30~14:30
【場所】宇都宮大学 大学会館2階多目的ホール
【報告者】
発表1「311以後の東北農業~農民を根なし草にしようとする政策と抵抗する農民」
     谷口吉光(秋田県立大学地域連携研究推進センター教授)
 発表2「グローバルな農業投資と土地問題~アフリカを中心に」
     アンドレアス・ニーフ(京都大学大学院教授)
 発表3「農業投資と農民主権~種から考える」
     西川芳昭(龍谷大学教授)
 発表4「農業開発援助と農民主権~モザンビークを中心に」
     舩田クラーセンさやか(東京外国語大学大学院准教授)
【座長】大林稔(龍谷大学名誉教授)
【コメンテーター】熊代輝義(JICA農村開発部長)、西川潤(前国際開発学会会長)


(1)座長報告

 第五回アフリカ開発会議(TICAD V)開催直後であったことから、セッションへの関心は高く、約130名の聴衆が参加した。各報告の概要は次の通り。
 発表1(谷口)は福島原発事故後の農民の逆境を報告、政府が農民を「根なし草」化する政策をとっていると批判し、農民がとるべき道について考察を行った。発表2(ニーフ)はアフリカで広がる土地収奪(Land Grabbing)の現状について報告した。環境保護事業の一環として土地が奪われる事例(Green grabbing)もある。発表3(西川芳昭)によれば、世界の主要種苗企業10社が種子供給を寡占支配し、さらに知的財産保護の動きがこれを強めている。他方、エチオピアの内発的な試みは、もう一つの種子保存の方法であり、「食料主権」の観点からも評価できる。発表4(舩田クラーセン)は、日本のODAが関与する土地強奪の動きに対し警告を発した。モザンビーク北部では、日本・ブラジル・モザンビーク政府三者の協力による農業開発事業が計画されているが、現地農民組織からは大規模土地収用の恐れがあるとの批判の声があがっている。
 以上の報告に対し、熊代は土地登記の推進、ボランタリーガイドラインの充実、企業の農業への参入の重要性を述べた。また西川潤は「だれが何のために、どのように開発を進めるのか」という古くて新しい問題が問われているとして、住民主体の開発の重要性を指摘した。
 翌9日には同セッションのフォローアップセッションが同じ会場で開かれ、谷口、熊代を除く報告者、コメンテーター全員が参加して、より深く活発な議論を繰り広げた。

(2)企画セッションの趣旨と意義
 東日本大地震、そして原発事故発生から2年が経過した。日本に暮らす我々の間でも、経済成長を目指す「開発」への疑問が深まりつつある中、本学会においても「原発震災から再考する開発・発展のあり方」部会が設置されるなど、「開発と発展」の見直しが行われつつある。
 本年6月1日-2日には、1993年から5年に一度開催されてきたアフリカ開発会議(TICAD)の第5回会議が横浜市で開催される。開発援助の風景を大きく変え、アフリカに焦点を当てたミレニアム開発目標MDGsのターゲット年が2015年に迫り、ポストMDGsの議論も平行して行われるであろう。
 2000年代より、日本の開発援助は、アジア・南米から急速にアフリカへとシフトしてきたが、アフリカは経済成長が目覚ましい一方、経済格差が広がり貧困者の割合は成長に見合った変化には至っていない現状にある。今、アフリカで何が起こっているのか、それは世界的政治経済構造とどう関係するのか、地域に暮らす人びとは何を願いどう生きているのか、構造と主体のせめぎあいの結果社会はどう変化しているのか、このような構造と当事者の変化を受け、開発援助はどのように関わるべきか――これらの問いを受けて、本企画セッションでは、原発事故後の日本における開発への問い直しの地平に立ち、経済成長が目覚ましいアフリカの開発と発展を、参加者と共に根底から考える機会としたい。
 中心的に取り上げるのは、2008年の食料価格高騰以来激化するグローバルな農業投資の問題である。サハラ以南アフリカの圧倒的多数を小農が占める中で、このような投資の影響は、地域社会にあらゆる変化を及ぼしつつある。この変化について、世界的政治経済構造を踏まえた上で、内発的発展、そこに暮らし生きる農民主権の視点から、土地、タネ/種子、食料について焦点を当て、問題提起・考察する。
 なお、冒頭に日本で内発的発展の視点から農民の声を聞いてきた研究者の発表を置くことで、この議論を同時代の世界的展開の中に位置づけ、国際的な政治経済構造の変化と主体のせめぎあいの中で生きる我々自身の問題として、「開発と発展」の議論をひらいていく試みとしたい。(座長:大林稔)

発表4「農業開発援助と農民主権~モザンビークを中心に」
舩田クラーセンさやか(東京外国語大学大学院)

 これまで歴史的手法を用いた研究を行ってきたため根拠の提示を重視するが、発表では触れる時間がないため、詳細については配布資料を参照されたい。またお手元に、発表内容に関する議論が分かりやすく示されている記事を配布している 。
 ここまで、農民主権を中心に据え、現在進むグローバリゼーション、投資、援助がどのような状態にあるのかについての議論を窺ってきた。本報告における私の結論を先に述べる。それは、現在日本でも世界でもブラジルでもアフリカでも、「農民なき農業」が推進されており、農民主権以前に農民の存在そのものが消されていくような時代にあるということ、そのことを教えてくれているのがブラジルやモザンビークの農民や市民だった――これが結論である。

 お話しするのは、現在進行中の日本の援助事業――日本・ブラジル・モザンビーク三角協力による熱帯サバンナ農業開発プログラム(通称プロサバンナ)である。主として、JICA、外務省、現地農民等による一次資料を使ってお話ししたい。

 アフリカの農村に20年ほど関わってきて思うのは、ついに、すごいスピードと濃度で農村部がグローバル経済に統合されていく最後の段階が到来してしまったということである。その全体状況下において、アフリカの土地の収奪が行われている。これに対し、日本の援助はこれを阻む、予防する、あるいは農民の権利を守る方向ではなく、加速化する結果をもたらしているのではないか、これも結論である。

 プロサバンナという日本の援助事業になぜブラジルが関与しているのか。JICAの資料ではブラジルの成功事例をアフリカにもっていくと書かれている。ブラジルの成功事例とは、日本が1980年代から2000年初頭まで支援したブラジルのセラード地域の農業開発、広大な大地を農業生産地へと開発した経験であり、これをアフリカに生かそうということだ。その理由は、セラードとモザンビーク北部が非常に似た特徴を有するからという。

 JICAの資料では「緯度が同じのため農学的条件が類似」「(両者ともに)熱帯サバンナ」が繰り返し出る。これはJICAの事業説明に必ず出てくる写真と説明であるが、地元の農民がこのように土地を余らしている、使いこなせていない、これを開発しないともったいないとされる。しかし、この土地はアフリカの伝統的な移動農法により休ませているもの。また、条件が一緒というが、実はセラードは人口が少ない地域で土地も肥沃ではなかったが、モザンビーク北部は真逆で、国で人口が最も多い地域。土地が良く、水があるから人口が過密であり、耕地の9割以上を小農が利用している。しかし、JICAの説明では、「使われていない農地」が強調され、「広大な土地」が開発を待っているとの触れ込みでこの事業は進められてきた。

 私はかつてブラジルのセラード地域に留学していた。この議論に聞き覚えがあったので、80年代のJICAの資料をあたった。その結果、セラード事業と現在のプロサバンナ事業の主張が酷似していることに気づいた。まず、「広大な未開拓地が余っている」ということ。また、豊かな森林の話が全くされないこと。セラードはブラジル最大の森林地域であるアマゾンに隣接し生物多様性の宝庫である。モザンビーク北部も最大の森林面積を有するが、これは全く語られない。ましてや、そこに暮らす人々の主権・発展については、いずれの事業の資料においても、一言も書かれていない。

 もう一つの特徴としては、「食料が足りない」という主張。これは70年代に日本がブラジルに注目した時と同様である。「誰」の食料の話かというと、日本の我々の食料。皆さんに共に考えて頂きたいのは、一体私たちは日々食べている食料をどうしたいのか。安ければそれでいいのか、食料を通して私達が世界や日本の農民や農村と結びたい関係とは何なのか、ということ。

 これらの点を抜きに、いくら援助の問題や政治・政策の話をしても、課題は乗り越えられない。これら援助事業は、「日本の食卓が困る」、「世界の食料の量が足りない」、ということから発想されているからだ。要は、安い食べ物の量を増やすことが目的化されている。となれば、近代的な機械化された大規模農業をやらなければ、量が増えずまた安くならない。となると、農地がバラバラではいけない。今週、安倍首相が日本の農地の土地集積について主張したが、まさにモザンビークで援助関係者が使っている表現と全く同じで驚いた。両国の人々が同じような状況の中に生きていることの証左だ。
 
 プロサバンナ事業の対象地はここ。ナカラ回廊沿い地域。同事業は2009年に締結され、2011年に開始。事業の目的は、「ナカラ回廊地域の農業生産性の向上」とされている。このセッションの参加者は既にお気づきかもしれないが、これはおかしい。なぜ「地域」が主語になるのか。「誰」が農業の主役なのか。先ほどJICAの資料にあったす96%の小規模農民はどこに行ってしまったのか。JICAの資料にも、「投資が入ってきて小農に色々な問題が起きている」と書かれている。しかし、農民は主体ではなく、あくまでも「配慮すべき対象」として扱われている。上位目標が「地域の農業生産性の向上」である以上、生産を誰がやってもいいとのニュアンスがある。
 
 ただし、最近JICAのメッセージにも変化がみられ、「小農の生計向上」を目的とする、と強く打ち出し始めた。しかし、その前提条件とされるのが「ルールに沿った民間投資」である。これがないと、小農生計向上は加速化できないと主張されている。つまり、小農支援の大前提として民間投資が不可欠で、主体は外部の投資家になっている。JICA理事長のいう「情報の共有」も、農民は「対象」にすぎず、「情報を持つべき主権者」とされていない。
 
 そもそもなぜこのような援助事業が立案されたのか。外交・国際関係、あるいは国内的な要件が非常に重要になってくる。資料の検討から、プロサバンナという援助事業が、地元の農民の願いから始まったものではなく、「上からのプロセス」――特に世界的な食料価格高騰、国際投資による農業開発への脚光、日本の援助業界の再編、ブラジル官民のアフリカ進出への野心――によって立案・形成されたことが指摘できる。これらをすべての利害を満たす対象として見出されたのが、モザンビーク北部であった。モザンビークもブラジルもポルトガル語を公用語とし、同じ緯度・熱帯サバンナなのである。

 現在は、「ブラジルからアフリカへ」という前提が批判を浴びたため、「小農支援」を強調しているが、骨子からブラジルを削除するわけにはいかず、残ったままである。
 
 両事業の類似点は二つの地域の農学的条件ではなく、むしろ農業開発のプランやアプローチである。つまり、大規模に機械化された農業によって生産性を向上させ、食料の量の確保し、安く効果的に土地を利用して生産性を高めるようとの考え方である。もう一つの類似する特徴は、両事業が「上から/外からのソリューション」として持ち込まれている点である。また、当時のブラジルと現在のモザンビークの政治体制の類似性も指摘できる。ブラジルの場合は軍事独裁政権下、モザンビークの場合は権威主義化が進む中、事業が政府と政府の間でのみ決められ、トップダウンで進められている点である。

 現在の日本で「ブラジルのセラード開発」が語られる際「成功」一色となるが、ラテンアメリカ研究者に聞いてみると、「セラードのことは問題だと思うが言えない」と口にする人が多い。
 
 セラード開発を、地元の小農や土地なし農民がどうみているか紹介する。JICAや関係者は、広い土地を少ない数の農家が上手く管理して大量生産を達成している点を「成功」の根拠とする。大半の農家が大豆を作っているが、ブラジルの大豆生産が世界一位になり、これがJICAの協力の成果であるとされ、セラード開発をアフリカで生かすという発想の根拠となっている。
 
 しかし、これがブラジル社会に及ぼした影響は語られない。特に環境破壊や土地分配の不平等さについては全く指摘がない。JICAの資料では、地元小農の土地が奪われる、以前からの土地なし農民に土地を分配しなかった問題は指摘されない。唯一、JICAに派遣された元ジャーナリストの報告で、「地元の小農から見ると大農優占に映るだろう」との指摘がある程度だ。
 
 JICAがセラード開発協力(PRODECERと呼ばれる)を行っている丁度その時期に、ブラジルでは軍事独裁が崩壊していくのであるが、民主化の重要な推進力となったのが土地なし農民や小農の土地をめぐる闘争であった。セラード地域では、多くの土地をめぐる闘争や反セラード開発/PRODECER運動が行われ、ついに独裁政権を倒すわけだが、これらの運動の根本にあるのが土地への想いであった。

 先ほどのニーフさんの土地収奪の話に植民地支配の話があったが、ラテンアメリカにおいて土地集積は植民地支配とその遺制継続の象徴である。そこにアフリカから奴隷が労働力として連れてこられた。この不平等な土地分配と労働の構造は独立後も変わらなかった。それを、軍事体制下で日本政府が支援と称して強化してしまった。ブラジルの民主化を目指す運動の中で、なんとかより平等な土地分配を目指したいという想いが力となり、社会の熱気となって生じたのである。しかし、日本の援助は権力者側に与し、土地の不平等分配を拡大した。
 
 これは当時の農民運動の雑誌であるが、日本の援助が金のため農民を素通りにし、土地をごく一部のために分割する様子が描かれている。一番興味深いのは、1980年代半ばに、既に土地なし農民運動が、PRODECERが「農民なき農業」の開発をしていると看破し、問題提起していた点である。にも拘らず、ずっとこの傾向が続いている。

 JICAや日本政府関係者によっては、このような開発の在り方が「良きもの」として強調されるが、これはブラジルの社会問題に関わる研究者や市民からすると社会的不正義の象徴であり、恥ずかしいものである。あるブラジルの研究者がこう述べた。「ブラジルのセラードは止められなかった。しかしアフリカについてはまだ間に合う。今なら止められる」と。
 
 今、プロサバンナ事業を通して、「儲かる農業の推進」、「小農と大農の両立や共存」が強調されるが、これは既にブラジル・セラードの事例で明らかなように、おかしな主張である。セラードでは、大豆の大量生産は職を減らし、家族農業の割合は半減した。現地社会の「セラード農業は農民なき農業の振興である」との主張はこれを踏まえている。

 例えば、100㌶あたりの農業労働者の雇用にしても、家族経営のトマト栽培は245人を必要とするが、セラードの大豆生産は機械化されているため2人だけでよい。「農業の近代化=雇用を増やす」との主張は、現地小農の視点では正しくない。ブラジルの統計によると、家族経営農業とアグリビジネスを比べると、前者は雇用の7割、地域の食料の7割を生産しているのに、融資を受け取ることができない状態にある。一方後者は9割近くの融資を得ているが、食料も雇用もほとんど見るべき貢献をしていない。
 
 このようなブラジル・セラードの開発や援助の負の遺産が日本で議論されてこなかったということ自体が、今モザンビークでプロサバンナ事業により繰り返されようとしている重要な背景を提供している。これについては国際開発学会の皆さんにも共によく考えて頂きたい。そして、なぜモザンビークの小農の発展の前提として、アグリビジネスや投資が条件にされなくてはならないのかを問いたい。これが日本の援助で今起きている事態である。なぜ「農民なき農業」を結果的に生み出すソリューションを上から持ち込むのか疑問である。

 最後に、なぜブラジルがモザンビークでのプロサバンナ事業に関与しているのかを検討したい。ブラジルでは激しい土地闘争が起こっている。これを含む多様な社会運動の結果としてルーラ政権が誕生した。そして、世界からアマゾンなどの森林伐採への注目があり、もはやブラジルには安く手に入る土地がない。投資や大農が農地を自由に広げられない時代になった。これは民主化の成果である。だからアフリカに目を付けている。他方、アフリカでも人々は土地をめぐって闘いを繰り広げている。しかし、彼らが自分の権利を守り抜くには、ブラジルと同様に国の民主化が不可欠であり、援助する側が彼らの権利を奪う支援を行ってはいけない。
 
 そこで、一体誰が現地小農の権利と森林を守るのか、という問いが生じる。もちろん当事者がまず重要な役割を担うが、たとえば日本に来てプロサバンナ事業の問題を訴えた人たちは今、現地で命を脅かされるほどの状態にある。それ程厳しい政治状況の中でも、日本に来て訴えるしかない事態を私たちは生み出してしまい、現在も生み出している。過去の失敗から学び、今と未来に役に立てられないか――これが本報告の根底にある趣旨である。

*このセッションの報告書は近日中に宇都宮大学のサイトに掲載予定。
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Author:MozambiqueKaihatsu
「モザンビーク開発を考える市民の会」の公式サイトへようこそ!本サイトでは、モザンビークの草の根の人びとの側に立った現地・日本・世界の情報共有を行っています。特に、現地住民に他大な影響を及ぼす日本のODA農業開発事業「プロサバンナ」や投資「鉱物資源開発」に注目しつつ、モデルとされるブラジル・セラード開発についての議論も紹介。国際的な食・農・土地を巡る動きも追っています。

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